争いに対処する具体的なルールを決めた成功例
一例を挙げよう。ゲイリー(仮名)がチーム内の対立に出くわしたのは、ボストンの小さなコンサルティング会社の会議に出席していたときだった。この会社のパートナーは、毎年12月に会議を開いて自分たちの報酬を決定している。これは慎重な議題であり、チームはすでにこの会議の進め方について基本的なルールを定めていた。それぞれのパートナーがその年の目標に照らした自分の成果を発表してから、他のパートナーたちが質問する時間が設けられるのだが、たいていは質問というより、より丁寧に明確な説明を求めるやり方だった。もし、深刻な問題がある場合には、この公式な場の外で対処するというルールになっていた。
だが、このときの会議では、スーザンが発表しているときにロバートというパートナーが何度も異議を唱えた。スーザンが成果として挙げた、あるプロジェクトが実際には彼女の手柄ではないと、あるアナリストから聞いたと彼は主張した。
他のパートナーたちは、最初はロバートに自由に発言させていたが、まもなくゲイリーをはじめとする数人のパートナーが、スーザンは公の場で侮辱されているのだということに気づいた。ロバートの証拠は伝聞によるものだったし、外部情報をどのような形で持ち込むべきかについてのルールがなかったのだ。
これに対して、メンバーが下した決定は、それまでは暗黙のものだった規範を明文化するということだった。有害な対立に発展するおそれのある2人のパートナー間の問題は、まず一対一で対処されるべきであり、解決できない場合にかぎりチーム全体に持ち込むことができる、というルールが定められた。
彼らはスーザンとロバートに、問題を2人で話し合って解決するよう促した。また、今後、外部の視点を会議にどのような形で持ち込むべきかを検討するグループも結成した。このグループは争いが起きたらすぐ対処し、すべての当事者の言い分を検討した上で、バランスのとれた勧告を作成する役割を担っている。