「評論家社長」「アイデア社長」も絶対NG
一倉定先生は、他にも2つ「会社をつぶす社長」として名文句を言っています。まず「評論家社長は会社をつぶす」。会社のことをまるで評論家のように論評してばかりで、先頭に立って具体的なことをやろうとしない社長のことです。
事を成すか成さないかは、本気で先頭に立ってやろうとするかどうかです。評論するのは簡単。とくに、否定的な評論をするのは簡単ですが、社長として重要なのは、「実践で結果を出す」こと。「評論より行動」です。
何をやるかやらないかを決めたら、すぐに具体的な計画に落とし込み、実行します。実行したら、結果を検証し、改善策や推進策を練り、再び実行する。このサイクルを繰り返し、指揮を取るのが社長の仕事です。「思考力」と「実行力」、この両方が必要なことは言うまでもありません。
では、もう1つの「会社をつぶす社長」とは何でしょう?
答えは「アイデア社長は会社をつぶす」です。その場の思いつきで、「これやろう」「あれやろう」とアイデアを出す。会議のときに一人でベラベラ語り、会議を独演会にしている社長がよくいます。意見やアイデアを出すのは自分しかいないと勘違いしている。
しかし、部下はアイデアがないわけではなく、ただ発言しないだけなのです。変わったアイデアを出すのが経営だと思っている人もいますが、大きな勘違いです。
できる社長は、みんなにできるだけ話をさせるような雰囲気をつくります。自分の仮説を持っていても、先にそれを言ってしまったら、みんなから率直な意見が出なくなることをよく分かっています。
最悪のケースは、社長の出したアイデアに誰も反対できず、検証もされずに実行に移され、うまくいかない。でも、社長にダメ出しできる人がおらず、適当に実行され失敗の傷が深くなる。それを見た社長が「なんでこんなことやっているんだ!」と怒る。自分が出したアイデアであることすら、もはや忘れているのです。まるで冗談話のようですが、現実に同じことが起きている会社は数多くあります。
できない理由より「やる方法」を考える
私の会社の行動規範の一つに、「できない理由よりやる方法」というものがあります。「無理だ」「できっこない」と初めから決めつけ、できない理由をあれこれ言わない。どうすればできるのか、「やる」という前提に立って、やる方法に知恵を絞るのです。
これは、何でもかんでもやろうとするわけではありません。何をやるか、やめるか、やるべきことを絞り込み、やると決めたことは全力でやるという姿勢とセットです。本当に自分たちがやるべきこと、自分たちがやらなくてもいいこと、そこをはっきり共有できているから、「やろうか、どうしようか」と中途半端に迷うことなく、やると決めたことは「やる方法」を探すことに全力を出せるのです。
とどのつまり、社長に必要なのは思考力と実行力です。
成功している社長はマメで、よく気づき、よく動きます。常に考えている、行動している。横着じゃないのです。社長が考えなくなると、組織は停滞します。停滞すると、実行力が落ち、組織力はますます衰退します。
まずは社長自ら、よく考え、よく行動し、社員の模範となってください。