(1)賞賛を示す

 『Beyond Reason』でフィッシャーとシャピロは、効果的な賞賛には、3つのステップが必要だと述べている。(1)相手の視点を理解する、(2)その視点の長所を見つける、(3)理解したということを言葉と行動で相手に伝える、の3つである。

賞賛を示すというのは、感情が高ぶっているときの行動としては常識と正反対のように見えるかもしれない。自分の感情を傷つけた相手になぜ賞賛を示す必要があるのだろう。ずばり言うと、相手の視点を理解し、賞賛すれば、相手のなかに協力しようという気持ちが生まれるからだ。あなたが自分の主張を聞いてくれ、高く評価してくれたと感じた人間は、あなたに協力する可能性が高くなる。「賞賛することは屈服することではない」と、シャピロは述べている。「相手の視点を賞賛することで、相手の考えとその考えがなぜばかげたものではないのかを理解していることを相手に知らせるわけだ。これによって、あなた自身やあなたの考えに対する相手の抵抗を減らすことができる。また、相手が抵抗姿勢をとり続けたとしても、相手を動かすのに役立つ貴重な情報を得ることができる」と、シャピロは語っている。

(2)親和関係を築く

フィッシャーとシャピロは、「親和関係を築く機会を見過ごし」「人と人を近づける感情的つながり」を軽視するという一般的な傾向について、ネゴシエーターに注意を促している。

「あなたが交渉している相手は単に組織の一部というだけの存在ではないことを忘れてはならない」とシャピロは言う。「人間はみな個人の物語を持っており、それを通じて互いにつながることができる」。

交渉を進めるなかで、あなたと相手の共通点を見つけよう。もしくは新しい共通点をつくるよう努力しよう。相手の家族や仕事や趣味について尋ねることで(「お子さんは何人ですか」「週末もよく仕事をなさるんですか」「山のそばにお住まいのようですが、スキーはお好きですか」等々)、感情的つながりを見つけてもよいだろう。

ネゴシエーターは親和関係を築くことで信頼を高め、緊張を和らげる。しかし、親和関係を利用してあなたにつけこむこともあるので、用心する必要がある。