ちなみに、この節税策は英国内で世論から袋叩きにあう事態になり、同社は英国に「自主的」に追加納税を行うことで決着をつけました。
またアップル社は、アイルランドと米国での会社所在地認定の差を利用する一方で、アイルランドとオランダとの国際的な課税調整制度を使うことで、何と実質的な法人税率を2パーセントそこそこにまで抑えることに成功していました。
同社が使っていた仕組みは、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」という名前までついているくらいで、これだけ有力にして有名な企業で、法人実効税率がたったの2パーセントというのはすごいとしか言いようがありません。
節税しやすい法人税
誤解のないように書き加えておきますと、スターバックスにせよアップルにせよ、彼らがやっていたこと自体は脱税ではありません。つまり違法ではないのです。ですから、こうしたことは今後も普通に起こりうることだし、それが完全に起こらないようにするのは極めて困難だと言わざるを得ません。
だからこそ、税に関する有識者たちの多くは、法人税よりは付加価値税型の消費税を支持するのです。国境の壁で守られ、実務上も売り上げとか仕入れという外形的な数字に依存して課税する消費税は、企業組織形成や決算手続きに依存して課税する法人税によりは、いわゆる「節税」を行いにくいはずだからです。
グラフで取り上げた米国やフランスに限らず、法人税より付加価値税に軸足を大きく移しつつあるのが、世界の先進国と言われる国々の傾向です。日本の消費税すなわち付加価値税の引き上げにも同じような側面があると私は思っています。
中間層に税負担が集中する
それでは個人所得税はどうでしょうか。興味深いことに、世界の先進国グループと言われる多くの国で、GDP対比でみた個人所得税収は、数十年のトレンドでみても大きくは動いていないのです。
先進各国の個人所得税の最高税率は大きく引き下げられているにもかかわらず、国民経済活動の大きさとの対比で見た税収、それが大きく変化していないということは、何を意味しているのでしょうか。
それは、中低所得層の税負担がどんどん大きくなっていることを示しています。
高所得層の人々、なかでも現代のパワーエリートと言われる企業経営者たちにとり、グローバリズムの恩恵ともいえるさまざまな節税策が可能になっています。
日産自動車を「再建」したカリスマ経営者として絶賛されていたカルロス・ゴーン同社会長(当時)が、有価証券報告書における役員報酬過小記載および会社資金の不正流用の容疑で逮捕され、その後、海外へ逃亡した事件は私たちを驚かせました。