面接官から飛ぶ「なぜ?」に備えよ
受験者にとっては「なぜ?」を準備すること、すなわち、なぜ自分はその行動をしたのか、なぜそう思ったのかを、一度立ち止まりじっくりと考え、客観的に見直した上で面接に臨むべきである。リフレクション(振り返り、内省)といわれる行為は、自らの思考形態や行動を俯瞰することで自らを理解し、他人から投げかけられる「なぜ?」に対峙する基礎体力を作る。
リモート時代の面接は、リアルの面接で使われた仕草や、対面したときのその人の持つ雰囲気などの非言語コミュニケーションで相手に自分を分かってもらうことができない。純粋に言葉の勝負になる。その為に必要なのは、受験者自身が自分を知ることであり、その上で自分の良さを売り込むことだ。
降って湧いたリモートワークブームは今後のわが国の採用のやり方を大きく変える可能性を含んでいる。
画面による視覚情報が頼りないと分かると、人間は文字情報によりいっそう重きを置くようになる。しかしこれも曲者である。学歴や職歴が良いからといって、必ずしも仕事ができるとは限らない。ましてや一緒に働いて楽しいかは分からない。
リモートが進むほど「見る目」が重要になる
文字化された情報の最も今日的なツールが、米国や中国で盛んに行われている信用スコアだろう。信用スコアは学歴、職歴、クレジットカードやローン、各種代金の支払い履歴、住居、その他さまざまな要素で個人の信用度を可視化するもので、日本でもさまざまな会社がサービスを開始している。
信用スコアの是非についての議論はここでは述べない。個人的にはかなり気持ち悪いものだと思っているが、判断のツールの一つだと割り切れば、直接会うことが困難な状態においては有用なのかもしれない。
気をつけなくてはいけないのが、信用スコアはその人の過去の振る舞いを人工知能が統計的に解析・評価したもので、未来の完全な行動予測ではないことである。その人の心持ちの変容、感情の状態、振る舞いの変化、一般的ではないひらめきや急激な成長はうまくポイント化されない。これらは採用において最も重要なことで、結局一般化された信用スコアは資料にこそなれ、採用の決定打にはならない。
人間は成長し変化する。それを理解し、組織で配置し、ビジネスに活用するという意思決定ができるのはやはり人間なのである。信用スコアは人間の判断のための材料の一つであるが、最終的には人間の意思決定を必要とする。
逆説的ではあるが、これからの社会はリモートワークが進めば進むほど人間としての相手を見極める力が重要になるのだ。