画面越しの相手を正確に見極めるためには?
リアルで会えない環境の中で相手を正確に見極めるためには何が必要か。
特に新しく奇抜なものではない。突出して重要となってくるのは「言語化能力」、もう一つは「なぜ?」と繰り返し質問をする能力である。視覚と聴覚以外の感覚が使いにくいウェブという状況で、この2つの能力が高い人はそうでない人よりも圧倒的に多くの情報を得ることができる。これは面接官、受験者双方に必要な能力である。
ウェブ上では、間のとり方や雰囲気で伝わる非言語コミュニケーションがリアルほどは機能しない。言葉の力が極めて重要になるのは必然である。そのためには自分の考えを言葉に出して「相手に分かるように」伝えることが重要で、相手が理解しやすい順番、言葉の使い方を工夫する能力が求められる。
相手が話す内容に不備や不足があったとき、その理由を問う「なぜ?」とその応答という双方向プロセスを通じて、お互いのマインドセットや、心象的な背景が浮かび上がる。言葉の揚げ足を取るのではなく、物事の本質を突き詰めていくための質問と復答の応酬は、今まで長い時間一緒にいることによって理解してきた事象を言葉にすることである。リアルでは阿吽の呼吸で何となく理解してきたものを、言葉にするプロセスである。
対面時以上に質問を重ねてみる
「なぜ?」と質問をする能力は、本質を突く質問、相手が話し出したくなる質問をする能力である。この種の質問をするためには、聞く側の当人が何を明らかにしたいのかについて具体像があることと、物事への理解があることが不可欠である。「なぜ?」を相手にさまざまな角度から問いかける訓練と、それに答える訓練が、面接する方もされる方も日常において行うことが重要になる。
「なぜわが社を希望するのか」という質問はテンプレート質問で、受験者は業界大手だからとか、自分の力を新しいところで試したいとか、無難なことを答えるのが普通だろう。面接官はそこで「なぜ、自分の力を違うところで試す必要性があるのか」「なぜ、そう考えるのに至ったのか」「現状の企業環境をどう考えているのか、それはなぜそう思うのか」など、さまざまな質問を違う角度から問い続けるべきである。
「なぜ?」の質問とやりとりのプロセス上で、相手の考え方、どのように物事を決めて実行してきたのかという軌跡が浮かび上がってくる。「なぜ?」という質問の主役は受験者自身である。自身の意思決定がなされていないと答えることは難しい。
コミュニケーションは双方向のやりとりである。自分の考えを言葉で相手に伝えないと相手からも考えを引き出すことはできない。相手の考えをより精緻に引き出すためには、相手が気づかないポイントを指摘することや、違う視点からの見解を表示することが必要となる。これは、五感全てを使えないオンラインの場面では必ず磨くべき能力である。