中国に依存したいディズニー
一方、ディズニーの中国依存は今世紀に入ってから、より顕著になったといえる。言うまでもなく、映画市場としての中国は米国に次いで世界2位の規模があり、同社は長年、市場開拓に力を注いできた。
中国の子供たちの間でも、「シンデレラ」をはじめとするディズニーの物語は広く知られている。上海と香港にはディズニーランドがあるわけだが、2005年オープンの香港の施設は明らかに中国本土からの観光需要を当て込んだもので、ディズニーと香港政府が事業主体となっている。
それから10年余りを経た2016年6月、今度は上海にも完成。当時のロイター電(2016年6月15日)によると、
「ディズニーは55億ドルを投じて上海ディズニーランドを建設した。これはディズニーの海外への投資としては過去最大。上海市の半径3時間以内には、推計3億3000万人がいるとし、中国という国の規模を踏まえると素晴らしい可能性があると(ディズニーのアイガーCEOが)語った」のだという。
今回の「ムーラン」制作に当たっても、ディズニーは忖度どころか「中国のご機嫌取りに腐心」した様子が伝わってくる。
ウォールストリート・ジャーナル日本語版(9月3日)は、「論争を避け、確実に公開するため、中国当局に台本の内容を知らせる一方、現地のアドバイザーに相談した。中国の映画審査委員会から特定の王朝だけを描かないよう警告を受けるなどした」と報じている。
米国内からも「中国の現金に中毒」と批判
ただ、こうしたディズニーの姿勢は現状の米中関係からみても、不興の声が上がるのは当然だ。
共和党所属のトム・コットン上院議員は8日、「中国の現金に中毒」のディズニーは「香港の抗議行動から南シナ海とチベットにおける中国共産党の違法な領有権主張に至る全て」において同党に従っていると主張した。
ただ、ディズニーの腐心をよそに、中国での興行収入は苦戦している。中国語メディアがロサンゼルス発として伝えたところによると、「2億ドルかけて作ったムーランだが、中国での公開1週目はわずか2300万ドルと失望」とした上で、2週目の週末が終わっても全世界で5700万ドルと目標に遠く及ばない状態にある。
コロナ禍の影響があり、多くの国々で動画配信サービスのみとなったとはいえ、「悪い方の話題拡散」が足を引っ張っている可能性もある。