サラリーマンの経費計上が可能になる制度がある

給与所得控除を超えた部分の支出のうち、特定のケースについては、必要経費として認めようというのが、「給与所得者の特定支出の控除の特例」である。

サラリーマンの経費計上が可能になるこの控除は、昭和62年度税制改正で創設された。通勤費など実際の出費が給与所得控除以上にあった場合の救済措置として制定されたのだが、創設当時はほとんど活用されていなかった。

平成25年に、必要経費と認められる範囲が拡大され、図書費、衣服費、交際費などが追加されたが、平成30年度の適用例は2000件に達していない。

サラリーマンも個人事業主と同じように、仕事をするうえでは、通勤費や図書費、交際費、スーツ代などの経費がかかっているはずだ。この制度があまり活用されてこなかったのは、サラリーマンの出費が給与所得控除額の範囲内でおさまっていたからなのだろうか。あるいは、サラリーマンの間でこの制度があまり知られていなかったからなのかもしれない。

下記のように、「特定支出の控除の特例」を使うことで、給与所得を圧縮することができる。つまり、納めるべき所得税が少なくなる。

【原則】
給与の総額-給与所得控除額=給与所得
【特定支出の控除の特例】
給与の総額-(給与所得控除額+特定支出のうち給与所得控除額の2分の1を超える部分〈最高125万円〉)=給与所得

年収400万円の場合いくら以上なら制度が利用できるのか

では、実際にどれくらい出費したら、「特定支出控除」に該当するのか。Aさんの場合で計算してみよう。

Aさんの令和2年分の給与の収入金額が400万円だとしよう。

給与所得控除の金額は、図表1に給与の収入金額が該当する箇所を探して求めることができる。

【国税庁HPより】

計算式に当てはめると、年収400万円のAさんの給与所得控除は、400万円×20%+44万円=124万円となる。

この金額の2分の1は、124万円×1/2=62万円となり、給与の収入金額が400万円のAさんの場合、年間の「特定支出」が62万円を超える部分を給与所得控除に加算することができることがわかる。