部下に「スマホで会議しますか」と言われ、動揺する53歳

こうしたオンラインスキルは学習すれば習得できるといっても、コロナ禍で突然、リモートワークに切り替わり、うまくやれと言われても苦手な人にとっては苦痛だろう。

実際にそうした人は少なくないようだ。IT企業のIIJが情報システム部門の担当者に実施した調査(6月23日~29日、269人)によると、ITシステムの課題で最も多かったのは「Web会議ツールの使い勝手や使い方の周知」で3分の1以上の100人以上が挙げている。「ユーザースキル不足によるサポートでIT部門が混乱した」という声もある。

コロナ前であれば年配者はこれまでの経験と知識を活かして発言し、会議をリードできたが、オンライン会議になると肩身が狭くなり、意見も言えなくなってしまいがちだ。

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実際にオンライン会議など在宅勤務を窮屈に思っている人も多い。住宅販売会社の営業主任のA氏(53歳)はこう鬱憤を漏らす。

「社内にいれば業務依頼をするときは資料を手渡しできましたが、今は個別に資料を送らないといけないし、パスワードもつけないといけない。添付ファイルをメールで送られると重かったりして開くのに時間もかかる。皆が社内にいればコピーして全員に渡せばそれですみましたが、オンラインになると操作がやたらに面倒くさい。でもITに強い人は何とも思わない。『何だったらスマホで会議しますか』と言うし、彼らとのギャップを感じます」

「なんで皆いないんだ?」「今日はオンライン会議の日ですよ」

確かに気持ちもわからないではない。そのA氏も失態を演じたことがある。ある日、出社し会議室に行くと誰もいない。後輩に電話で「なんで皆いないんだ」と言うと、「今日はオンライン会議の日ですよ」と言われたという。

ついこの間まで全員そろってのリアル会議に慣れた人にとっては、オンライン会議はやはり勝手が違う。とくに難しいのがコミュニケーションだ。

サービス業の40代後半の人事課長はオンラインのデメリットをこう語る。

「社内にいると顔色を見て、あいつ焦っているな、忙しそうにしているなとかよくわかりますし、ちょっと声かけしたり、助けてあげたり。残業した翌日は顔色を見て、大丈夫かと言うし、元気がなさそうだったら、飲みに誘ったりするが、リモートだと表情や態度が読み取れない。しかも報告・連絡のみで、相談ができない。表情が読み取れないため会話に過不足が発生し、会話のキャッチボールも難しい」

何となく気持ちはよくわかる。しかし、オンラインを使いこなしている人からすれば正反対の意見も出る。IT企業の30代の経営企画担当の社員はオンラインを使いこなせない人をこう言って突き放す。

「新しいスキルの習得や変化への対応を嫌って、Webツールを使いこなせない人ほどデメリットを訴えるんです。Web会議だと集まる人の数も増えるし、海外の人も参加できます。Webツールにせよ何でも新しいツールを習得し、有効に使おうとすれば必ずメリットがあります」

これも一理ある。とくに部下のマネジメントを担う管理職にオンラインスキルがなければリモートワーク下での生産性は低下するだろう。