音楽はストンと人の内側に入ってくる

自宅隔離中、音楽の力を感じさせる映像がSNSにはたくさん投稿されていましたよね。音楽は言語とは違って、脳を疲れさせることなく、ストンと人の内側に入ることができます。私もクラシックからブラジル音楽、日本のポップスまであらゆるジャンルの音楽を聴きますが、とにかく何かにむしゃくしゃしているようなときは音楽を聴くと、気持ちがすっと切り替わります。

ヤマザキマリ『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)

イタリアのお国柄を形容するときに「マンジャーレ(食べる)、カンターレ(歌う)、アモーレ(愛する)」というフレーズが付いて回りますが、彼らはこれを微妙な気持ちで受け止めています。日本人が「スシ、ゲイシャ、サムライ」と形容されるのと同じ気持ちになると言えば、わかってもらえるでしょうか。イタリア人だからといって国民全員がオペラやサッカーのファンというわけでもないように、短絡的なステレオタイプでまとめられたくはないはずです。それでも、子どもたちによる「誰も寝てはならぬ」の合唱をこの時期に聴いて、グッと心にくるものを共有できる素地は、多くのイタリア人がもっているのだと思います。

個人主義で群れるのを嫌い、時には親族や家族ですら信用せず、社会のあり方に対して常に懐疑的なイタリア人たちですが、“表現”による感動や高揚感を分かち合うことで他者との繋がりを確かめる。ああいった彼らの動画を見ていると、心細い状況の中における“表現”の重要性と、人々が一体化することの本質的な意味を考えさせられました。

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