にわかには信じられない話かもしれないが、顧客対応の前線に30年近く身を置いている私から見ると、このような理不尽なクレームはコロナ禍以前から決して珍しいものではない。

暴力的、反社会的という意味での「ブラック」とまでは言えないが、常識的で善良な「ホワイト」でもない、このような「グレー」なクレームが近年増加しているのだ。

グレークレームを発する5つの“タイプ”

ここでは、そのようなグレークレームを店員にぶつける側の心理的な背景を分析していきたい。

先に挙げた例の男性の場合、「釣り銭をトレーに入れるという店側の対応に不満を感じ、それを爆発させた」というのが表面上、見えている行動だ。一方で顧客心理の視点から見ると、その背景には、

・個人的なストレスを、他者を攻撃することで発散したい
・相手(企業)より、自分のほうが優位であると主張したい(自分を認められたい)

というような欲求が潜んでいる。

私も所属している日本対応進化研究会では、グレークレームを発する顧客タイプを以下のような5つに分類している。

天野泰守監修、日本対応進化研究会編集『グレークレームを”ありがとう!”に変える応対術』(日本経済新聞出版社)

この男性は攻撃性が高く、その場の感情や勢いによるところが大きい(非戦略的な)ストレス発散型と見ることができる。

このタイプは、自分の個人的な問題によるストレスを解消するため、応対者をターゲットとして相手が萎縮するような言葉遣いや行動を行いやすい。そういう意味では、この例の男性はまさに典型的であろう。怒りを爆発させるトリガーがあれば、いとも簡単に攻撃モードに入ってしまうことが多いタイプでもある。

コロナ禍での長引く自粛生活によって、日本全体にストレスが溜まっている。必然的に、ストレス発散型傾向のある顧客からのクレームも発生しやすくなっているのだ。これは、顧客対応だけでなく、自社内や家庭内など人間関係全般でも起こりうることなのではないだろうか。

「感染予防対策のルールなので」は最悪手の対処

では、「ストレス発散型」の人から行き場のないストレスを理不尽にもぶつけられた側はどのように対応すべきなのだろうか。

先の事例だと、お客さまに対して、店員が「掲示を見ればわかるし、感染予防対策のためのルールなんだから理解しない方がおかしい」というような接客をおこなうのは、申し出対応としては最悪だ。店長対応でも収まらず、本社へクレームの電話が入るような事態が発生しかねない。

主張の正しさを認められたい「ストレス発散型」のお客さまは、不満を抱える自分の気持ちに寄り添うことより感染予防策のほうが優先されていると感じ、火に油を注いでしまうからだ。