コンビニでつり銭をトレーで渡されて激怒した高齢男性がいたという。男性は一体何に怒っているのか。大手住宅設備メーカーの顧客対応部門に約20年勤務してきた酒井由香氏は「クレームをぶつける人のなかには、個人的なストレス解消として店員に怒りを爆発させるタイプがいる。理屈を説くよりも、相手が怒りを抑えられない人だと認識することが大切だ」という——。
「客を客だと思っていない態度だ!」
新型コロナウイルス対策で浸透しつつある「ニューノーマル(新しい生活様式)」。さまざまな場面で今までと違う対応や応対に遭遇しても、多くの人は素直に受け入れているが、中には新しい様式に馴染めず、不満を募らせ、企業に対して苦情としてぶつける生活者も存在する。先日聞いた、ソーシャルディスタンスに関するクレーム例を紹介しよう。
平日の昼下がり、コンビニエンスストアのレジ前で会計をしていた高齢の男性が突然、店員に対して怒り出した。
「つり銭をトレーに入れて返すなんて失礼だ!」
「つり銭を自分でトレーから拾えってことなのか?」
「客を客だと思っていない態度だ!」
と、店員に詰め寄る。
店員は、なぜ急に怒られたのか分からないという顔で、レジ横のポスターを指しながら、「ここに貼ってるように、トレーに返すことになってるんで……」と掲示内容を繰り返すばかり。「だからそんなことを言ってるんじゃない。こんな教育をしているなんておかしい、店長を出せ! 責任者を出せ!!」と、店内にいる全員が振り向くほどの大声を上げはじめる。結局、スタッフルームで店長が長時間の対応をおこなうこととなった。