しかし、年を取っていくにつれ、いくら頑張っても、実際に歩いたときに見える景色が、若い頃の予想とは異なっていることが気になってきます。人間、若い頃は世の中のことをよく知らないので、自分自身を過信して大きな夢や希望を持ちがちですが、中年期になると、それは実現されないことを実感を持って悟るのです。

そして、40代に入って不調とまではいかなくても、何か精神的にもやもやしたものを感じ始める人が多いようです。さらに症状が進み、若い頃描いていた“幻想”が崩れたある日、ぼうぜん自失として立ちすくんでいる自分に気づくのかもしれません。

ミドルエイジクライシスに陥ったとき、適切に対処する必要がありますが、気を付けないと問題をこじらせる方向に進んでしまうこともあります。

例えば、今まで以上に頑張ろうとするのも間違った例の1つです。まだやれるはずだと疲れている自分をさらにムチ打ち、業績を上げようと努力を重ね、若さを取り戻すためのダイエットに励む人もいます。

加齢による衰えに逆らい続けるのはどだい無理なので、この無理を重ねるというやり方はいずれ破綻してしまうでしょう。下手をすれば頑張るための心のエネルギーが枯渇してうつ病になってしまい、問題をさらにこじらせることにつながります。

若い時に抱いていた将来像を手放す必要がある

ミドルエイジクライシスに陥った場合は、今までのやり方にしがみつくのではなく、きちんと問題を分析して、丁寧に対処する必要があります。そのために、まずはもやもやの原因が、若い頃から持ち続けてきた“幻想”にあることを認識し、“幻想”を手放す覚悟をすることが第一歩です。

ここで誤解のないように1つ付け加えておきますと、私は「人生後半には、明るい将来などない」と言っているわけではありません。

断言しますが人生後半には「豊かな人生」があります。何を隠そう、私自身もミドルエイジクライシスに陥り、しばらくうつ病の一歩手前という時期をさまよいましたが、今は危機を乗り越えることができました。

社会から教えられた価値観から一度離れ、自分自身ともう一度向き合い、心から「そうしたい」と思える生き方を選ぶことによって、人生後半には今までにない新たな輝きが生まれるのです。