仕事は人生の一部分と割り切って趣味などのプライベートが充実していればよいですが、仕事のウェイトが大きく責任感が強い人ほど、苦しくなります。

原因は「成長し続けられる」という“幻想”

なぜこのように、人生の半ばを迎えると情緒不安定になってしまうのでしょうか?

その大きな原因の1つが、人生の前半に描いていた「自分は成長を続け、将来はもっと活躍しているはずだ」という期待に満ちた“幻想”と、実際の自分とのギャップに気がついてしまうことにあります。

心理学者のユングは、青年期から中年期への移行期を「人生の正午」と表現し、この移行期に人は危機を迎え、考え方をシフトする必要に迫られると言っています。

人生は1回限りなので、成長の過程にある人生の前半においては、正午の絶頂から午後の下降に至る変化を、前もって実感を込めて知ることはできません。人生の後半に入ったときに初めて、人間は衰えていくことを悟らなければならないのです。

そして、それまでがむしゃらに頑張ってきた在り方を変え、自分自身の内面と向き合うことが必要となるのです。

また、あなたは今までどのような価値観を指針として生きてこられたのでしょうか? 中年期になって精神的に不安定な状態に陥っているあなたは、もしかしたら社会から教えられた「こうすればよいのだ」という価値観を基に、頑張ってこられたのかもしれません。

しかし、このような価値観が自分にとって本当に大切かどうかということは、あなたの中では十分吟味されてこなかった可能性があります。

両親や教師や先輩がそう言うのだからきっと正しいのだろうと思い込んできただけかもしれません。その価値観は、実はあなたを幸せにするためのものではなく、あなたを社会に適応させるための価値観だったのかもしれません。

さらに頑張ろうとするのは逆効果

若い頃は、どんどん成長し続ける“幻想”を持ちながら、社会に適応するために自分に我慢を強いて頑張ります。

いずれ自分が衰えていくということは知識としては聞いたことがあったとしても、若い頃はあまりそのことを意識しません。若いときは、年配の人が「年を取ってから体が言うことを聞かない」という話をしているのを耳にしても、どこか人ごとに聞こえ、将来の自分がそうなるという危機感はあまり感じません。ですので、自分が常に成長し続けられるというイメージを持ちながら将来設計を描きます。