4000人以上のがん患者から学んだこと
中年期の危機による変化を乗り越えれば、豊かな人生後半を過ごすことができることは、心理学の知見で示されており、文学の中にもさまざまな言葉で書かれてはいます。
しかし、私自身に人生後半の「豊かな人生」に至る道筋を最も明快に示してくれたのは、がんという病気と向き合った私のクライエントの方々です。
「がん」という病気は、「自分はいつまでも成長し続けられる」という“幻想”を一気に打ち砕くとともに、人に「死」を意識させ、「人生は限られている」という真実をいやおうなく人に突き付けます。
「死」はできれば目を背けておきたいものですが、意識することでさまざまなことを人は考えることになります。
がんに罹患すると最初は誰もがショックを受けますが、しばらくすると「限られた人生をどう生きるのか?」という問いと向き合うようになり、私のもとにカウンセリングを受けにやってこられます。
私はその方のお役に立とうと全力を尽くすのですが、向き合ったクライエントの方々が示してくれた生き方は、どれも力強く説得力のあるものでした。生きるために大切なこと、本質的なことをたくさん教えていただき、その結果として私自身の人生がとても豊かになったのです。
最後に、ミドルエイジクライシスの到来は苦しいことかもしれませんが、“幻想”に基づいた若い頃の夢から離れ、真の「幸せな人生」を得るためのチャンスでもあることを強調しておきたいと思います。