「陳列棚は低く、客導線を無視して通路に平置きにケースが置かれてました。昭和40年から50年代のスーパーを彷彿とさせましたね、そのイメージを一新しようと、反時計回りで青果から鮮魚、寿司、精肉、飲料、惣菜、パンと導線上にコーナーをレイアウトしました。これで通路もずいぶんとすっきりし、お客様にとって買い物しやすい売り場になりました。ようやく普通のスーパーになったというところでしょうか」
そんなレイアウト、スーパーなら当然だ、と思ってはいけない。
これはウオエイに限った話ではなく、地方ではよく見られる悲しいスーパーの現実だ。いったん「負のスパイラル」に陥ると、そこから抜け出せなくなる。競合の激しさがプラスに働かず、店がやさぐれていくのである。
「この店で買いたい」とお客に思わせろ
ウオエイが店舗網を構える新潟県下越地方は競合が多い。あまりの激戦は「新潟戦争」と呼ばれるほどだ。
スーパーマーケットである以上、食品をフルラインで扱うのは当然として、競合がひしめく状況下では、「あの商品はウオエイで買いたい」と客に思わせる得意分野がなければ生き残れない。差別化を図るため、岩本は鮮魚と寿司コーナーの強化に着手した。なにせ屋号が魚栄で、いかにも魚が美味しそうな名前である。前身は鮮魚商だ。このアドバンテージを生かさない手はない。
もっとも変わったのが、2年前から鮮魚売り場の隣に設けていた寿司コーナーだ。これまで鮮魚売り場の仕入れは取引先任せだったが、専任の人材を採用し、商品の買い付けを自分たちの手で行うことにした。寿司コーナーで使用するネタはこの鮮魚売り場から仕入れ、店内で炊きあげた寿司飯を使い、売り場内で従業員が手で寿司を握っている。注文に応じて一貫から握るサービスも好評だ。「ウオエイは変わった」との客の高評価に直結したのが、この鮮魚売り場である。
精肉売り場も著しい変化を遂げた。岩本は「新潟の人は牛を食べない」と聞かされたが、「それは美味しい牛肉を売っていないためではないか」という仮説を立て、その検証を試みた。
といっても、いきなり松阪牛をぽんと置いても売れるはずもないし、価格も高すぎる。そこで、A5等級(牛肉の最高ランク)としては比較的手頃な佐賀牛を導入し、試食を重ね、特別お試しセールを行って、おいしい牛肉の体験機会を提供した。