ハングリー
ハングリーな人は、常にいま以上を求めている。もっとたくさんのことをしたい。もっと学びたい。もっと責任を負いたい。ハングリーな人は、もっと働けとマネージャーに急せき立てられる必要がない。自分のなかに動機があり、勤勉だからだ。常に次のステップや次の機会のことを考えている。そして怠け者に見られる可能性を嫌う。
スマート
3つの美徳のうち、一番説明が必要な美徳だ。言葉から連想される意味とは異なるからである。これは、知的能力を意味するものではない。チームという文脈において、「スマート」という言葉はシンプルに、常識的に人と接することを指す。相手に気を払って適切に振る舞うためのあらゆる能力が含まれている。スマートな人はグループに起きている事態を把握し、最も効果的な方法で周りと接する方法を知っている。良い問いかけをし、相手の発言に耳を傾け、会話にしっかりと集中したままでいる。

最も優れているのは「謙虚さ」の美徳

この3つの美徳を見て、なんだかありきたりだと思っているなら、私も大いに同感だ。個別に見ると、その1つひとつの美徳を「目新しく新鮮なものだ」と提示することはためらわれる。

パトリック・レンシオーニ『理想のチームプレーヤー 成功する組織のメンバーに欠かせない要素を知り、成長・採用・育成に活かす方法』(樋口武志[訳]/サンガ)

しかし「謙虚、ハングリー、スマート」のモデルを強力で独自のものにしているのは、それぞれの要素ではなく、むしろこの「3つを必要とする」という点だ。1つでも要素が欠けると、チームワークの達成はぐっと難しいものとなり、不可能になることさえある。

また、20年以上取り組むうちに、謙虚、ハングリー、スマートというモデルは職場の外にも適用可能だと思うようになった。謙虚で、ハングリーで、スマートな配偶者、親、友人、そして隣人は、有能で、刺激がもらえ、魅力的な人物だろう――人を惹きつけ、人により良く貢献する。

しかし他の2つに比べて、謙虚さの美徳が際立っていることは認めざるを得ない。事実、あらゆる美徳のなかで、最も優れたものであり、聖書ではすべての罪の根源とされる高慢の対極をなすものだ。

本書の読者が、この本から何かを得て、人生に活かしてくれることを願う。

●訳者プロフィール
樋口 武志(ひぐち・たけし)
1985年、福岡県生まれ。訳書に『insight(インサイト)』『異文化理解力』『優れたリーダーは、なぜ「立ち止まる」のか』(以上、英治出版)、『無敗の王者 評伝ロッキー・マルシアノ』(早川書房)、共訳書に『ノー・ディレクション・ホーム―ボブ・ディランの日々と音楽』(ポプラ社)、字幕翻訳に『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影〈シャドウズ〉』などがある。
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