3つの美徳はこうして見つかった
しかしながら、周りよりも優れたチームプレーヤーで、5つの行動をうまく実践できる人がいることも認めざるを得ない。そういう人たちは生まれつきではなく、人生や、仕事や、熱心な鍛錬を通して、理想のチームプレーヤーに必要な3つの美徳を身に付けてきたのだ。
その3つの美徳とは、謙虚であること、ハングリーであること、スマートであることだ。
さかのぼること1997年、チームのメンバーと私は経営コンサルティング会社「テーブル・グループ」を設立した。前職で私が率いていた部門のメンバーたちだったので、会社の核となる価値観は簡単に決まった。それが「謙虚、ハングリー、スマート」だ。
前職の部門を導いてくれた指針であり、新しい会社でも引き継ぎたいと考えたのだった。私たちはこれらの指針を体現した人のみを雇い、この指針に抵触するような社内外の決断は避けるよう尽力した。
そのコンサルティング事業では、リーダーたちがより良いチームを築けるよう力を貸しただけでなく、リーダーたちが自社の事業計画や、経営戦略、役割、責任、会議内容、そして本書の文脈において最も重要な、自社の価値観を明確にする手助けもしてきた。
価値観について話し合っていると、クライアントは必ずと言っていいほどテーブル・グループの価値観についても尋ねてきた。
企業理念を顧客に真似される奇病な現象
私たちは「謙虚、ハングリー、スマート」という価値観を表立って宣伝したことはなかった。会社のウェブサイトにも、どんな関連資料にも載せていなかった。自分たちが理解し、それに忠実でありさえすれば、それ以外の人に理解してもらう必要はないと考えていたのだ。
とはいえ、クライアントに聞かれたら、答えないわけにはいかない。それで「謙虚、ハングリー、スマート」について説明すると、奇妙なことが起きるのだった。自分たちもその価値観を取り入れたいというのだ。
もちろん、すぐに反論して、組織の価値観というのは他社からコピーしたり拝借したりできるものではないと説明する。その組織ならではの歴史と文化を真に反映したものであるべきだと。
クライアントが私たちの価値観に関心を持つのは急場しのぎだとか、怠慢だとすら思っていた――最初に耳に入ってきた良さそうな言葉に飛びついて、価値観の模索はこれでおしまいと宣言したいのだろうと思っていた。
しかし、やがてわかったのは、私たちがクライアントの気持ちを誤解していたということ、そしてクライアントが謙虚、ハングリー、スマートのモデルを欲するのには論理的な理由があるということだった。