「謙虚、ハングリー、スマート」に含まれる普遍的な価値
まず、私たちの会社のカルチャーは何よりチームワークを大切にするものだった。クライアントとの作業においても、社内においてもだ。私たちはいつも、言ったことは徹底して実践してきた。さらに、私たちと接点を持つ企業は実質的にすべてチームワークに関心を持っていた。
わが社が『あなたのチームは、機能してますか?』の本でよく知られていたことを考えると、それは自然なことだった。だから、当時は気づかなかったけれども、わが社の採用基準や核となる価値観を、まさにチームプレーヤーの定義にかなうものだと考えたとしても、それほど驚きではなかったのである。
それに気づいてからは、他の組織にとって謙虚、ハングリー、スマートがどんな意味を持つかを改めて考え始めた。それらの言葉は会社の核となる価値観に据える必要はなかったが、チームワークを中心にして動くことを目指すどんな会社にとっても、採用および育成における重要な指針となるものだった。
謙虚、ハングリー、スマート――いちばん重要な要素はどれか
ジム・コリンズの古典的名著『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』(日経BP社)では、企業が成功するにあたって「適切な人をバスに乗せる」ことの重要性が説かれている。
会社のカルチャーに合う社員を雇って確保することのたとえだ。これはとてもシンプルかつ腑に落ちる考え方だが、なぜかしばしば見過ごされており、多くのリーダーが主に能力や実務のスキルをもとに採用をおこなっている。
本気でチームワークを自社のカルチャーにしようと試みる組織にとって、その「適切な人」とは、謙虚、ハングリー、スマートの3つの美徳を持った人だ。これら3つを「美徳」と呼んでいるのは、その言葉が「資質」や「美点」といった言葉に近いだけでなく、高潔さやモラルといったニュアンスも含むからだ。
謙虚さは、3つのうちで最も重要であり、まさに美しい徳である。ハングリーさと対人関係におけるスマートさは、どちらかと言えば「資質」や「美点」のカテゴリーに入る。そんなわけで、美徳という言葉がこの3つをくくるには適している。
もちろん、謙虚でハングリーでスマートなチームメンバーを見分けて育てたり、自分自身がそれを実践したりするためには、まずこれらの一見シンプルな言葉の意味を知っておく必要がある。
チームワークという文脈で言えば、謙虚さは基本的に想像している意味に近い。優れたチームプレーヤーには、過剰なエゴや上下関係のこだわりがない。周りの貢献はすぐに気づいて称え、自分へ注目を集めることには腰が重い。成果は分かち合い、自分よりチームを強調し、個人ではなく全体の成功と考える。そのため、謙虚さはチームプレーヤーにとって欠かせない最大の要素であることに驚きはない。