小学教科書の「漢字併記政策」を棄てた文政権
さすがに韓国国内でも危機感を覚えた知識人は多く、主要紙が「漢字は国際競争力」という論陣を張ったり、子どもに漢字を学ばせるマンガ教材が大ヒットしたり、2012年には歴代首相が全国漢字教育推進総連合会の推進のもとで、李明博大統領(当時)に「小学校の正規教育課程で漢字教育を実施することを促す建白書」を提出した。
しかし、学びについて一度ラクをすることを覚えたら、なかなか元に戻すことは難しい。小学校の教科書に漢字を併記する政策を推進していた韓国教育部が、2017年の文政権発足後にそれを廃棄していたことがわかったという(レコードチャイナ2018年1月13日付)。「小学生の負担が増える」といった理由が主だった。昔はやっていたのに……という批判は通用しないらしい。一度失ったものはあまりに大きい。
こうした漢字廃止が韓国人の歴史の学習に支障をきたし、ひいては日韓の間の歴史問題の軋轢の元凶となっている……という見立てについて、確たる証拠は今のところない。日本側も、歴史教育についていまだ腰の定まらぬ状況にある。一国の歴史の断絶は悲劇しか呼ばないし、それは他国にまで累が及ぶこともある。しかし、隣国がそちらに突っ走っていっても、第三者がそれを阻止することはできない。
せめてこの漢字廃止の事例を他山の石として、自国の言語・文字について安易な廃止論・簡略化論に流されるな、という教訓としておくべきであろう。