ソニーは03年1~3月期に大幅赤字を出し、日経平均を7699円という「バブル後の最安値(当時)」まで下落させた「ソニーショック」の前科がある。経営危機を乗り切るため、3年間で約2万人のリストラが行われた。
ソニーを去った人材のなかには、グーグル日本法人の辻野晃一郎社長やJVC・ケンウッドHDの前田悟執行役員など、他社で要職に就いた人間も少なくない。優秀な人材の流出が今回の危機を招いたのではないか――。Aさんもそうした見方に同調する。
「早期退職とリストラは違うと思っています。うちはまだ『肩たたき』という性質のものじゃない。部長は朝礼で『正社員は1人も切らない』と明言してくれた。でも会社にすがる人ばかりになったら、どうなるのか」
Aさんは転職組だ。ソニーへの入社が決まったとき、家族みんなが喜んだのだという。
「人員削減のニュースが流れたとき、父親から『大丈夫か』と電話がかかってきました。自分の雇用は心配していませんが、家族には心配をかけたくない」
ヒトに優しすぎた日立筋肉質になる好機か
「日立はヒトに優しい会社。優しすぎるぐらい。早期退職はまともな会社になるいいタイミングかもしれませんね」
設備大手・日立プラントテクノロジーの営業マンBさん(31歳)は悲壮感より期待感を込めて、そう語った。
親会社の日立製作所は09年3月期の連結営業損益で7000億円という過去最大の赤字を見込み、グループ全体で7000人の人員削減を予定している。子会社の同社でも3月末までに1100人を削減する計画だ。昨年3月には550人の早期退職を募ったが、5月に発表された応募者は271人だった。
「支社には担当の企業さえわからないような仕事のない人がごろごろいます。早期退職のターゲットはそんな50代の社員。対象は40歳以上ですが、まわりで早期退職を考えているような人間はほとんどいないと思います」