韓国に謝ったところで、永久に賠償を要求される

しかも日韓合意では「政府が10億円」を拠出しているのであり、民間からの寄付によっていたにもかかわらずこちらも保守派に評判の悪い「アジア女性基金」よりも格段に、「政府による賠償」に近い形だったのである。

さらに言えば安倍総理は第1次政権期の07年にも、慰安婦に対して「心から同情する」「申し訳ない気持ちでいっぱい」と、当時のブッシュ大統領との共同会見で述べ、それを受けたブッシュ大統領も「私は安倍総理の謝罪を受け入れる」とし、「河野談話と安倍総理の数々の演説は非常に率直で、誠意があったと思う」とまで述べている。

強制性を否定する安倍総理の振る舞いや対韓姿勢、あるいは支持者層の言動が、こうした「実は安倍総理は総理として公式に、何度も慰安婦問題に関して謝罪している」事実を打ち消しているのかもしれないが、安倍総理の数度にわたる慰安婦問題への謝罪は事実であることを確認しておきたい。

安倍支持層の間でもこうした「謝罪」への賛否は分かれている。それは「(強制連行を含め)過大に日本の悪事と喧伝されていることをも認めることになる」という点に加え、「韓国にいくら謝罪しても謝罪を強要され続ける」という思いがあるからだ。現に日本の総理大臣、ましてや対韓強硬派と言われがちな安倍総理がこれだけ謝っても「真の謝罪をしていない」として土下座像を作られてしまうとなれば、日本の保守派が言う「韓国に謝ったところで、永久に謝罪(と賠償)を要求されるだけだから無意味だ」との主張を、韓国の一部国民が証明しているようなものだ。

かつてひざまずいて謝罪した鳩山元総理

さらにいえば、相手は慰安婦ではなく日本からの独立運動家の女性だったとはいえ、監房の前でひざまずいて謝罪した鳩山元総理という存在がいるにもかかわらず、土下座像を制作した彫刻家が「西ドイツの首相」にインスピレーションを得たと発言しているのはどういうわけなのか。元首相がここまでやっても、結局は一時的な話題として消費されたにすぎない、ということではないのか。

もし「土下座像」が鳩山元首相を模したものであれば、ここまでの軋轢あつれきを生まずに済んだのではないか、と思わせるような日本側のネットの書き込みも散見されたが、実際にひざまずいて謝罪したにもかかわらず像のモデルにならなかった鳩山元総理の心中はいかばかりか。

さすがに「土下座像」に対しては韓国国内からも反対の声が上がっているという。願わくば、韓国国内でこの像の是非を問い、あくまでも韓国国民の意見を参考にしたうえで撤去するなり非公開とするなりの処置が行われることを第一に期待したいところだ。

仮に日本で、原爆慰霊の像とされる母子や子供の像の前に、特定の個人であれ象徴的なものであれ、アメリカ人男性が土下座するような像が設置されれば、アメリカや原爆投下に対するスタンスがどうであれ、「悪趣味だ」「むしろ慰霊の思いを妨げる」とする意見が大半を占めるのではないだろうか。