麦とホップだけで造ったビールへの偏愛が鼻につく
【麦とホップのみのビールしか認めない】
1980年代後半、「ドライビール戦争」が起きた。アサヒスーパードライの大ヒットに端を発して、各社が「ドライビール」投入。一大市場を形成して現在に至るのだが、『美味しんぼ』ではこれも批判の対象だ。
要するに、麦とホップ以外にいろいろな材料が入っていることを批判しているのだが、結局、いまでもスーパードライが売れ続けている事実が、このビールがうまいことの証左ではないか? それでも作者は「お前たちは味がわかっていない」といいたいのだろうか。
作者が認めているビールは「ヱビス」など麦とホップだけを原材料にしたものだが、世界的ブランドの「バドワイザー」にしてもアメリカで人気の「クアーズ」にしても、麦とホップ以外の材料は入っている。もっというと、ベルギービールなどは日本の分類では「発泡酒」になるものも多い。
ドイツでは16世紀に制定された「麦、ホップ、水、酵母のみを原材料とする」というビール純粋令が現在も適用されているが、その基準に照らし合わせると、ビールでも何でもない銘柄は世界中にある。いわずもがな、日本の基準でもビールではないものが多い。ドライビール批判、そして“麦芽・ホップのみビール”への偏愛はとても鼻につく。
ファストフード批判に絡めた大企業への言いがかり
【日本の郷土料理を絶賛し、ファストフードを見下しすぎている】
真の国際化のためには日本の郷土料理を知る必要がある! ということから始まった「日本全県味巡り」は、ストーリーも何もあったものではなく、ひたすら取材をした相手をホメ称え、地元の料理を絶賛することに終始している。
かろうじて、長崎に関するシーンでは「やたらと味付けが甘い」ということについて山岡が嫌悪感を示す様子を描いているものの、基本的には山岡も、敵である海原雄山も、地元民や郷土料理への批判は皆無である。
対して、大量生産のファストフードやコンビニ食への批判的な目線は当初から変わらず、大企業への批判はもはや言いがかりのレベル。最先端の工場を案内する男性は大抵、吊り目で野卑な目をし、不気味な笑顔を浮かべた姿で描かれる。作者は電通出身なので、大企業の欺瞞などを間近に見てきたであろうことは想像できるが、それにしても「中小企業=エライ/大企業=諸悪の根源」的な思想に毒されている。