組織のリーダーとして大切なのはチームの一人ひとりの力を最大限引き出し、彼らがポジティブな気持ちで仕事に取り組めるようにして職場のベクトルを合わせることです。
欠点や弱点を指摘するより、いい点を褒めて伸ばす。さらに、単に褒めるだけでなく、自分より後輩であっても、その人の得意分野なら頼りにしてやること。そういう接し方、声のかけ方が人を育てることに繋がると思います。
長所を伸ばせば、弱点は自然とカバーされるものです。たとえば、わが社の経営戦略の基本に「強いものを、より強く」がありますが、これは自社で持っているいい製品、技術、得意な分野に力を入れていくということです。
私が社長に就任した2002年春は空前の半導体不況等で業績が悪化し、いかに会社を立て直すかが課題の時期でした。そこで「強いものを、より強く」を打ち出したわけです。
似た言葉に「選択と集中」がありますが、これでは何を選択すべきか選択の基準がわかりづらい。その点、「強いものを、より強く」なら、「ああ、そうか。この工場にはこういう得意分野がある。それを日本だけでなく世界に売れるものにすればいいのだ」と、やるべきことを具体的に思いつくことができます。
その強い部分に力を注ぎ、それを伸ばしていけば、弱いところは自然と整理されカバーされていきます。
人間の場合も、これと同じだと思うのです。部下の弱点をうるさく指摘するのではなく、強い部分を引き出して伸ばしてやる。部下と接するとき、私はいつもそういう言葉を投げかけるように心がけてきたつもりです。
状況によっては、多少、かける言葉を変えたり、工夫するときもあります。
現在、若手社員と直接話す機会といえば、月に2カ所ぐらいずつの支社、営業所、工場回りのときです。私は出身が研究・技術畑なので、工場へ行けば生産現場の人にあれこれ製品や製造に関することを話しかけます。改善された点があれば、それを取り上げて褒めます。