4人兄弟の末っ子として育ったせいか、人と話をするときに、あまり上からモノを言う気になれません。部下と話をするときも、自然と、相手の目線と同じ高さで話しています。研究所の若手マネジャーだった時代、部長、所長時代、開発本部長時代……そして、現在も同様です。

<strong>三菱電機会長 野間口 有</strong><br>1940年、鹿児島県生まれ。<br>65年京都大学大学院修士課程修了。同年、三菱電機入社。<br>93年中央研究所所長、95年取締役情報技術総合研究所所長、97年常務開発本部長、2001年専務、02年社長、06年より現職。<br>座右の銘は、「素にして野だが卑ではない」。経営もそうでありたいと語る。
三菱電機会長 野間口 有
1940年、鹿児島県生まれ。
65年京都大学大学院修士課程修了。同年、三菱電機入社。
93年中央研究所所長、95年取締役情報技術総合研究所所長、97年常務開発本部長、2001年専務、02年社長、06年より現職。
座右の銘は、「素にして野だが卑ではない」。経営もそうでありたいと語る。

たとえば、部員が製品に何か品質問題を起こしたときも、頭から「何だッ、これは!」と怒鳴りつけることはできず、「一緒に原因を考え、一緒に直そう」という姿勢を取ってきました。もちろん、上司と部下の関係なので形のうえでは叱ることになりますが、その中に「俺も若いときは同じような失敗をしたものだ」などという言葉を必ず加えたものです。

失敗して十分反省している人間に追い打ちをかけて怒ってみても、けっしていい結果には結びつきません。

それより、失敗をみんなの力でどうカバーするか、問題の背景は何か、再発防止のために何をすべきか――その探究に力を入れたほうが、問題の処理において、より本質的な解決に繋がるとも考えていました。

「相手と同じ目線で話す」のは私の性格に由来するものかもしれませんが、経営者として意識的に一番基本に置いているのは、「正直に話す」ということです。

自分の考え方や経営状態、問題点や方向性など、社員に向かって本音でフランクに話して、自分の“逃げ場”をつくらないでおくことが、リーダーには大事だと思っています。現代は経営の透明性、説明責任が厳しく問われる時代。その意味からも社の内外に対して正直に話すことが一番の基本だと考えています。

ただし、部下に対して欠点や弱点をダイレクトに指摘する“正直さ”はむしろ不要です。相手を落ち込ませるだけ。私の場合、部下に対しては、常に「元気が出るような言葉」をかけるよう気をつけてきました。具体的には、少しでもいいところを見てやるということです。