だとすれば、私たちが「お得感」=「幸せ」を感じているものは、実は虚像であり、過去の経験の積み重ねによって、「幸せ」と脳が反応しているだけという考え方もできます。そうなると、人の満足度や消費行動が集まって形成されている経済活動は、経済成長となり、それが国力といったリアルな実社会へと結びついていきます。

「高い・安い」「お得感」「これが欲しい、これを食べたい」といった欲求から消費が生まれ、それが経済となっているわけですが、その「欲求」のスタート地点はつくられたものかもしれません。消費者は人類の歴史が積み上げてきた、過去の経験則上でつくられた欲求を満たしているにすぎないのではないかとも感じてしまいます。もし、違った歴史があれば、今生きている私たちは、違った欲求、違ったものに、お得感を感じるのでないでしょうか。

今後のサイゼリヤ経済圏

「たった1円で何を」と思うかもしれませんが、経済は人々の消費活動の集まりで、人々の気持ちの集合体だと言えます。経済学では「家計」は何も考えていない無邪気な「モノ」として捉えています。しかし、これまで述べたように「自我」と「お得感」の境界線は定かではなく、消費者は意思を持って消費行動をしているのです。

サイゼリヤ経済圏では、今まで、300円よりも299円、400円よりも399円、200円よりも189円といったように、キリのいい数字よりも数円だけ安い値段の提示によってお得感といった「価値」を提供してきました。現金決済の時代では「現金」でお釣りが戻ってくることでお得感を感じていましたが、キャッシュレスではそのようなやり取りはなくなります。

デジタル経済圏に決済が移行していくなかで、よりこのような傾向が強くなると感じます。消費者の「お得感」の比較対象がよりフラット化していくでしょう。サイゼリヤも、他のイタリア料理店はすでにライバルではなく、年々クオリティーが上がってきているコンビニエンスストアの総菜や、単価の安い「居酒屋」との間で「お得感」をめぐる競争がさらに激化してくのかもしれません。

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