この理由は「デジタル技術の恩恵によって、消費者が生活の質の豊かさを感じるようになっているため」だと言われています。つまり、世界の成長指標にGDP+iの軸が必要になってきているということです。

現在、デジタルサービスが生み出す「消費者余剰」(消費者が最大限支払ってもよいと思う支払意思額と実際の価格の差。金額には表れない消費者の利便性やお得感)が、非常に大きくなっているのです。Amazonプライムや、無料で利用できるLINE電話など、消費者は、無料または、信じられないほどの低料金で、質の高いサービスを受けられるようになったのです。これらを、実現しているのが、「デジタル資本」の存在なのです。

お得感から人は自分の生活を豊かだと感じるのです。実際、世界では生活が豊かになったと感じている人が増加しています。そういった意味でも、サイゼリヤはデジタル企業ではないものの、企業努力によって「お得感」という経済価値を消費者に与えている企業だと言えるでしょう。

たった1円の値上げから「自我」に思考が至る

上記のように、消費者が感じている「お得感」が「新しい経済価値」なのだとすれば人は何をもって「お得感」「安い」と感じるのでしょうか。それを考えるうえでヒントとなるキーワードは「自我」です。

人間には「自我」は存在していないという研究者もいます。落合陽一氏によれば、「実は自我だと思っているものは膨大にインプットした過去の情報により、意識が反応しているにすぎないといった考え方」があると述べています。つまり「自我」は存在しているものではなく、過去の経験の積み重ねによって「感じる」だけのものかもしれないのです。