もう古巣にも戻れず、政権を延命するしかない

その後も、YouTubeで星野源の人気に便乗して、自宅で優雅に犬と戯れている動画を投稿して顰蹙ひんしゅくを買った。こうした稚拙な国民向けアピールを考えたのは、今井、佐伯ラインだといわれている。

官邸のコロナ対応を取り仕切ってきたのも今井たちだったが、その神通力も通用しない事態になる。

「今井氏が主導した『減収世帯への三十万円給付』案が公明党の反対で『一律十万円給付』にひっくり返されるなど、これまででは考えられない事態が相次いだ」(官邸担当記者=週刊文春7/23号)のである。

6月24日には、コロナ対策のために招集した専門家会議を、西村康稔経済再生相が突然、解散すると発表した。日本記者クラブで座長の脇田隆字が会見をしている最中で、記者から知らされた脇田は、驚きを隠さなかった。

秋に解散総選挙を目論んでいる安倍首相と今井たちは、感染予防に重点を置き、経済回復に熱心ではない専門家会議に不満を持ち、それを忖度した西村が、専門家会議のメンバーにも知らせず解散してしまった。これもまた今井が省の後輩の西村に吹き込んだといわれている。

安倍がコケたら古巣の経産省へ戻ることもかなわない今井にとって、コロナ感染拡大に怯える国民のことよりも、レイムダック状態の安倍政権の延命こそが最重要課題なのである。

それを如実に示したのが、拙速としか思えない「Go Toキャンペーン」だった。

“失敗”続きを見かねた安倍首相の思惑

国内旅行の半分額相当を政府が支援するというもので、「支援は一人二万円までとされているものの、宿泊日数や使用回数に制限はないという大盤振る舞いです。今年度の一次補正に盛り込まれた予算は約一兆四千億円。同じ一次補正で、感染拡大防止策や医療体制の整備に配分された約六千七百億円をはるかに上回ります」(官邸担当記者=週刊文春)

ここにも当然ながら、政局が絡む。公募で選ばれたのは大手旅行代理店や業界団体で構成される「ツーリズム産業共同提案体」というところで委託費用は1895億円にもなる。この中の業界団体は3つで、二階幹事長ベッタリの団体だといわれている。

最近、菅や石破茂と急接近している二階をつなぎ留めておくために、二階に安倍が配慮したということだろう。今井たちの相次ぐ“失敗”を見かねた安倍首相が、再び菅を頼るようになったと週刊文春が報じている。

石破に接近して、「俺が推せば石破は勝つ」とうそぶいている菅をつなぎ留めておくために安倍は菅と会食する。その席で、菅が唱える「感染拡大防止と経済活動の両立」が実現すれば、落ち込んでいる支持率もアップするかもしれないと安倍は考え、「そのため菅氏は首相にとって有力な後継候補となったのです」(同)。

だがここでも大きな誤算が生じるのである。