ビールの「一本足打法」で空振り

「スーパードライ」のCMでは、福山雅治さんを起用し『のどごし』と『キレ』を演出。「クリアアサヒ」のCMでは櫻井翔さん、高畑充希さんを起用し焼きそばとの演出で商品の魅力を引き出しています。ですが、アサヒはコロナ以前から「ビール・発泡酒・第3のビール」の中で、「ビール」に経営資源を集中する『一本足打法』を取り続けていました。

19年の有価証券報告書のデータでは、酒類が約41%、欧州やオセアニアに展開している国際事業も約32%を占めている構造になっています。欧州はコロナの影響が日本よりも甚大で、英国、ドイツにおいてロックダウンが行われたことも、業績への打撃となっています。

アサヒの酒類事業の内訳を見てみると、ビールが55%である一方、発泡酒が6%、第3のビールなどの新ジャンルが15%と、ビールに比べると占める割合が小さいことが分かります。第3のビール、発泡酒、クラフトビールなどに消費者の嗜好が移行しているなかで、ビール一本足打法は非常に危険だと言えます。

さらに、アサヒは、飲食店向けの販売比率が約5割と高く、新型コロナウイルス感染拡大で外食を控える人が多く、業務用に強いアサヒビールの販売数量が減少し「スーパードライ」が苦戦した結果となりました。飲食店向けの販売比率が高いことは、コロナ以前であれば、むしろ売り上げの基盤を固める施策に間違いはなかったでしょう。しかし、今では「家で個人に選ばれる商品」でなければ厳しいといった現状を突き付けられた格好になったのです。また、17%を占める飲料事業の収益のメインである自動販売機も、人々が外出を控えたことにより、売り上げを落としています。

※編集部註:初出時、「クリアアサヒ」が「ビール」であると読むことができる文章になっていましたが、「クリアアサヒ」は「新ジャンル」の商品です。誤って伝わることのないように訂正致しました。(7月17日13時56分追記)

 

「バランス経営」で負けない戦いを続ける

真っ赤のラベルの「本麒麟」のCMでは江口洋介さん、杏さん、タモリさんが登場し、「ビールのうまさ」を伝えています。セグメント別の売り上げは、ビールの売上高35%、国内飲料15%、医療15%と酒類事業以外にも、医療分野への取り組みを行っている点が注目です。食と医療の間に、第3の事業領域を作り出そうとしており、新しい売り上げの軸に育っていく可能性があります。第3のビールだけでなく、ビールとは全く違う事業に軸を持ち出していることからも、「本気の脱ビール」の経営姿勢がここからも伝わってくるでしょう。

キリンビールの販売量の内訳を見ても、ビール(26%)、発泡酒(18%)、新ジャンル(36%)、その他(20%)とバランスが良く、第3のビールなどの新ジャンルが36%と最も比重が大きくなっている点が特徴です。経営のバランスを見せつけた結果と言えるでしょう。

キリンビールが7月10日に発表した1~6月のビール系飲料の販売量は、前年同期比で4%減でした。第3のビール「本麒麟」が16カ月連続で前年を上回っており、国内のビール系飲料市場は約1割減少したなかで、同社は4%減に踏みとどまっています。本麒麟など重点7ブランドにバランス良く投資を行ってきたことが、コロナ禍の環境の変化に対応し、家庭の巣ごもり消費に応えられたと見られます。