参加費は4980円、通常のバスツアーの3分の1

「石見神楽鑑賞と現地旅行会社がご案内する地域の魅力」ツアーの参加費は4980円。通常のバスツアーの3分の1で、前日までに送られてくる島根の地酒「のど黒」、のどぐろほぐしの瓶詰め、あかてんといった名産も代金に含まれる。ツアー当日は午前10時集合。Zoomの使い方説明や参加者の自己紹介が終わると、ドライバー役の「なかちゃん」がエンジン音を再生してバスを発進。画面には車窓の風景が移り変わっていく。

ご当地クイズ大会やサービスエリア休憩を経て、程なく日本海側の島根県に到着。通常は4時間以上かかる移動時間をスキップできるのも、オンラインツアーのメリットだ。浜田駅前では横断幕を掲げた観光協会職員と現地旅行会社のスタッフがライブ中継でお出迎え。

三宮さんぐう神社では普段は公開されていない内部を、このツアーでは特別に見学できる。ハイライトとなる島根県の伝統芸能「石見神楽いわみかぐら」鑑賞は、新型コロナウイルスの影響で公演中止の時期も、浜田市観光協会の協力により収録映像で実現した。笛や太鼓囃子に合わせて、金糸銀糸を織り込んだ大蛇が舞台に登場、迫力の舞いが15分間画面に映し出される。最後の目的地「道の駅ゆうひパーク」道の駅に立ち寄り(紹介されたお土産はネット注文もできる)、夕日を鑑賞してツアーは1時間半で終了。

画像提供=浜田市観光協会
4匹の大蛇とスサノオの戦いが大迫力の「石見神楽」を鑑賞

オンラインだからこそ一緒に旅をする「仲間」になれる

見る、遊ぶ、食べるといった本来の要素をオンラインで極力再現したこのツアーでは、参加者全員の顔が画面に映し出される。通常のバスツアーでは同行者以外は他人だが、ここでは一緒に旅をする「仲間」として、初対面ながらコミュニケーションを楽しめるのが、一番の魅力なのではないか。楽しかったが1時間半は短すぎる、ということでリピーター化するファンもいるという。

6月には第2弾ツアー「日本三大秘境・祖谷渓絶景旅」も開始。外出自粛の中、留学生の修学旅行をオンラインでできないかとの要請を受け、うどん作り体験が外国人に人気の「中野うどん学校」とのコラボで、オーダーメイドツアーを10日間の準備期間で実施した。

通常のバスツアーでは顧客の平均年齢は63歳、オンラインバスツアーでは49歳だという。国内旅行のボリューム層である団塊の世代が高齢化していく中、これまでバスツアーにはなじみがない新たな顧客層も開拓できた。日頃は遠くて行けない観光地もオンラインで気軽にお試し参加できれば、その先リアルツアーの見込み客につながる期待もある。

以前より、難関の認定試験に合格したうどんマスターの専任ドライバーが、地元人に人気の讃岐うどん店を案内する「うどんタクシー」など、ユニークなサービスを展開してきた琴平バス。バスの運行再開後もオンラインツアーは実施し続け、日本に来ることができないインバウンド客向けのツアーも新たに企画していくという。