夜の街に代わり「オンラインスナック」が人気に

「オンラインスナック! あなたの名前を占ってもいいですか?」「東大博士号ママの【オンラインスナック】」「【オンラインスナック】120分マンツーマンでお話しませんか?」。

体験ツアーを提供する「TABICA」上には、現在100を超えるオンラインスナックが「開店」している。サイトを運営するガイアックスTABICA事業部は、新型コロナウイルスによる体験ツアーの予約キャンセルが相次ぐ2月中旬、新サービスとしてオンライン体験をいち早く開始した。当初は認知度も低く予約が伸び悩んだが、学校休校やイベント中止が相次いだ3月、外出を手控え家で過ごす人々の自粛疲れが広まると、その受け皿となるかのように、オンラインスナックの予約が増えていった。

スナックといっても実際の店舗は必要ない。自宅からZoomでつないで、旅行や動物などママが好きなテーマでお客さんと語り合うオンライン飲み会で、実際にはお酒を飲めない人や女性のお客さんも少なくない。料金も数百円と手ごろなため、一晩に何軒もはしごする常連客もいる。最初は会社員など素人ママが中心だったが、昭和から続く老舗スナックのママなどプロも参入しはじめ、ついには両者共同で8人のママによるはしご酒イベントに発展した。

「はしご酒イベント」の告知バナーは参加ママの1人が制作した
画像提供=TABICA
「はしご酒イベント」の告知バナーは参加ママの1人が制作した

アメリカやカナダからも「リモート観光」が人気

「【オンライン英語雑談会】英語初心者も歓迎! 日本語ちゃんぽんOK」は、現在では満員御礼にもなる人気ぶりだ。だが、2月24日に「TABICA」第1号オンライン体験プログラムとして公開された当初は全く申し込みがなく、「短命に終わりそうな体験でした」と、学びing(RailfanGuide)の斉藤常治代表は振り返る。著書の『AirbnbやTABICAオンライン体験の作り方』(RailfanGuide文庫)では、オンライン体験の創成期から各マッチングサービスが参入してきた業界の動きや、事務職OLが人気ママとなり転職と結婚を機に引退する手記まで、オンライン体験業界事情を詳しく明かしている。

緊急事態宣言の対象が全都道府県に広がると、オンライン体験参加者はさらに増えていった。5月5日の子どもの日には、「親子でオンライン体験フェス」を実施。7500人が申し込み、自由に外出できない家族ニーズを捉え、6月、7月と毎月連続開催の人気企画となった。5月29日は箱根湯本芸能組合による「芸者とオンライン飲み会“Meet Geisha Online Drinking”」が英語対応で実施され、アメリカやカナダからの参加者がリモート観光を楽しんだ。

7月31日~8月2日に開催される「#オンライン青森夏まつり」では、新型コロナウイルスのため中止となった青森ねぶた祭りや弘前ねぷた祭り、八戸三社大祭などの夏祭りが一同に会し、1000人で踊る跳人体験やお囃子演奏、ミニねぶた作りなどが双方向で楽しめる体験ブースが100以上用意される。開始から半年足らずのオンライン体験は、今年は夏祭りが次々と開催中止となり一度は落胆した地方の人々に、希望を取り戻させるプラットフォームになろうとしている。