「反抗」した泉佐野市の寄付金は巨額に達した
それに総務省が待ったをかけたのだが、泉佐野市はこれに真っ向から反抗する。制度が変わる2019年5月31日までの限定として、返礼品に加えてアマゾンギフト券を配る「300億円限定キャンペーン」を展開したのだ。「返礼品は30%以下」という総務省の“指導”を完全に無視し、中には返礼率50%の品物に10%のアマゾンギフト券まで上乗せし返礼率が実質60%になるものもあった。
こうした泉佐野市の「反抗」がテレビのワイドショーなどで繰り返し取り上げられたこともあり、2018年度の寄付金受入額は497億円という巨額に達した。市民税や固定資産税など「市税収入」がざっと200億円なので、その2年半分に当たる。
しかも千代松市長は次のようなコメントを出して総務省の神経を逆なでした。
「総務省は国民には見えづらい形で、返礼品を実質的に排除する意思、そしてふるさと納税を大幅に縮小させる意図で新制度を設計しているとしか思えない」
地元や大阪だけでなく東京でも記者会見を開き、メディアにアピールし続けたのだ。
総務省の裁量範囲を超えたやり方だ
これに対して総務省は強権を発動した。制度が変わる直前の5月14日に、新制度から泉佐野市のほか佐賀県みやき町、静岡県小山町、和歌山県高野町の4市町を対象から外すことを発表したのだ。要は、総務省の言うことを聞かない自治体を「村八分」にしたのである。4自治体は2018年度の受入額の上位4つで、いずれも100億円を超えていた。ふるさと納税で人気を博したところを狙い撃ちにしたとも言える。
6月1日以降、これらの市町に寄付しても、ふるさと納税制度上の税優遇は受けられなくなった。さらに総務省は、追加で除外する可能性があることを示唆し、ふるさと納税をどうやって集めるか苦心していた他の自治体を震え上がらせた。
小山町などは恭順の意を示して総務省の怒りが解けるのを待つ姿勢を見せた。ところが泉佐野市はその後も徹底抗戦を続ける。
総務省の決定に対して不服を申し立て、それが却下されると、「国地方係争処理委員会」に審査を申し立てた。同委員会は総務省に除外判断を再検討するよう勧告したが、それでも総務省は態度を変えず、泉佐野市は訴訟に踏み切った。
識者の中には、泉佐野市がやりすぎだったとしても、法律が変わる前の行動を理由に新制度への参加を認めないのは、法律の「不遡及の原則」に抵触するという見方が根強くあった。最高裁判決はまさにその点を突き、総務相の裁量範囲を超えていると判示したのだ。