抵抗手段がことごとく失われている

返還記念日は中国の人々にとって、「植民地主義により、列強に取られた領土を取り返した日」という位置付けから、毎年盛大な祝賀行事が行われる。一方では、民主化を訴える活動家らが大きなデモ行進を行う日でもある。

1年前のこの日は、過激なデモ隊が香港特別行政区の立法会(議会)議場へと乱入。建物内のガラス扉や鉄柵を次々と破壊し、ついには議場に掲げられた「行政区章」にもペンキをかけるという暴挙を犯した。

さすがに、中国政府としてはこうした破壊行為が「記念日」に繰り返される歴史だけは避けたかったのだろう。例年ならデモ行進が認められていたが、今年は新型コロナウイルス対策のひとつ「50人以上の集会禁止」という規定を用い、返還後初のデモ禁止が発表されていた。

脱退した活動家たちは、9月に予定されている立法会選挙に立候補する動きを見せていた。しかし、同法の条文には「過去の活動の合法性」を問う内容も含まれており、同法に反対する彼らの立候補は受理されない可能性が高く、中国への抵抗手段はことごとく失われつつある。

イギリスは「香港移民」を受け入れへ

ボリス・ジョンソン英首相は1日、毎週定例の首相代表質問(PMQ)で、中国による香港国家安全維持法の施行は1984年の中英共同声明の「明白で深刻な」違反と非難した上で、香港市民に対し英国の市民権取得にも道を開くと改めて表明した

ラーブ外相もこれを受け、「英国海外市民(BNO)旅券を持つ香港人とその家族への市民権付与」に関する法令化に向けた概要を説明した。これまでは1997年の返還以前に生まれた者にのみBNOを発給するという格好で声明を出していたが、この日の説明では「BNO保持者の配偶者とその扶養家族」と範囲が広がった。これで、香港生まれの親を持つ多くの若者にも英国移住の可能性が広がることになる。

従来の決まりでは、BNOを使った英国入国は「6カ月間の観光目的での滞在」となっていたのが、これを「就労、留学を含む限定的な居住権の付与、滞在期限は5年」と条件を大幅に拡大。さらに滞在5年を超えさらにもう1年滞在した場合は市民権取得への資格が得られる。

下院でのこの日の討論で、与野党議員らの反応は「今後の中国との関係性を見直すべき」、あるいは「香港の自由を訴える若者たちに十分な施策を検討するのが望ましい」といった意見に集約されており、今後、英国が移民政策の制度改正に向けた障害はほぼないと考えても良いだろう。

ドミニク・ラーブ外相は、香港人の英国市民権取得の人数枠について「特に制限は設けない」と明言しており、香港市民を全面的に後押しする構えを見せている。