ほかの資金ニーズとのバランスをいかに取るかも重要
筆者のFPとしてのキャリアは20年以上になるが、その間、Aさん夫婦のように若い世代が「老後資金を準備したい」という人が確実に増えてきたと感じる。
以前は、老後資金のご相談といえば、50代後半か60代が中心で、40代でも、子どもがいないDINKsからの「老後資金を早めに作っておきたい」というニーズがあるくらいだった。
たしかに、金融広報中央委員会の調査(※)でも、金融資産の保有目的として最も高いのは「老後の生活資金(65.8%)と10年近くトップをキープしている。
※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](2019年)
次いで、「病気や不時の災害への備え」(58%)は前回よりやや低下し、「子どもの教育資金」(32%)がその分上昇した結果となっている(図表参照)。
老後資金作りのための資産運用を考える場合、まず知っておきたいのは、前述のAさん夫婦のように、ライフイベントの優先順位をよく考えること。
“人生の三大支出”とは
さらに重要なのは、複数のライフイベントが重なる場合、いかにバランスを取りながら運用をしていくかということだ。
一般的に、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の3つは“人生の三大支出”と言われているが、例えば、20代、30代は、「住宅購入資金」と「子どもの教育費」が重なり、40代、50代は、「住宅ローン返済」と「子どもの教育費」に加え、「老後資金」も視野に入れていかねばならない。
三大支出のうち、「教育資金」は使う時期が決まっている。その上、公立や私立か、自宅通学が自宅外かなど、進学コースによって、費用が変わってくる点も厄介だ。
足りなければ、奨学金や教育ローンとなるが、安易に借りれば、親の老後だけでなく、子どもの将来にも影響を及ぼしかねない。