30代前半でも「老後資金」が心配…

先日、30代前半のAさん夫婦から住宅ローンに関する相談を受けた。現在は、賃貸にお住まいだが、近い将来、住宅を購入したいという。

すでにお子さんは1人いるが、2人目も検討中。妻は、子育てのため、退職したが、家計の状況によっては、働きに出るのもやぶさかではないといった様子だ。

「自分の収入や預貯金などで、どれくらいの物件が買えるか」「住宅ローンはどれくらいなら安心か」など、よくあるご相談で、年収や現在の家賃や貯蓄状況などから試算していくのだが、Aさんご夫婦の家計支出の中で、多くを占めていたのが民間保険だった。それも、医療保険や生命保険だけではなく、個人年金保険が多い。

円建ての定額個人年金だけでなく、外貨建ての変額個人年金もあり、毎月の保険料は10万円近くにのぼっている。

聞くと「保険代理店に勤める知人に勧められて」ということのようだが、ご本人たちも、「やっぱり、僕たちの年代って、老後が心配じゃないですか。公的年金はもらえるのか分からないし、資産運用は早く始めた方が良いって聞きますし」など、老後資金に対する思い入れの強さを感じた。

若い世代は「老後」より前にクリアすべきライフイベントがいっぱい!

Aさん夫婦の言い分はある意味で正しい。

早く投資を始めた方が良いのは、時間を味方につけることができるためだ。

相場は変動するものだし、良いときもあれば悪いときもある。時間さえあれば、保有資産の時価評価が落ち込んでいても、また上昇するまで保有し続ければ良い。

しかし、使い道が「老後資金」に限定された個人年金保険の場合、お金が使えるのは、今から30年以上も先である。

まずは、それだけ長い間、お金を固定化してしまう点はデメリットであり、それに対するメリット(金利)がどれだけあるのかも熟考すべきだ。

そこで、Aさん夫婦に対して筆者がアドバイスしたのは、ライフイベントの優先順位をもう一度よく検討すること。

たしかに、人間は、結婚しなくても、子どもを産まなくても、住宅を買わなくても、等しく老いる。

生きている限り、「老後」というのは誰もが経験するライフイベントではあるが、物事には順番というものがあり、Aさん夫婦の場合は、老後の前に、マイホーム購入や子どもの教育をクリアしなければならない。

試算の結果、現状の家計で、高額な年金保険料を払い続けると、住宅購入後に数年で家計は赤字に転落することがわかり、「保険は見直します」と納得してAさん夫婦は、帰っていかれた。

資産運用については、住宅購入後に、「つみたてNISA」や「個人型確定拠出型年金(iDeCo)」を利用して、コツコツ少額から積立を始めることをお勧めした。