ペンス副大統領の脅し「貿易交渉に影響を与えるだろう」

5Gの機器構成は大きく分けて「コアネットワーク」と基地局やアンテナなどの「ノン・コア」に分けられる。「コアネットワーク」とグローバルなインターネットの間には堅牢なファイアーウォールが構築される。一方基地局は端末と「コアネットワーク」をつなぐ通信の「土管」である。多数の「土管」から系統的にデータを抜き取ることは極めて困難なのである。

英国政府の決定によると、ファーウェイは「コアネットワーク」への参入は認められず、軍事施設や原子力発電所での導入も除外された。また設備全体の35%までとの制限が設けられた。

米国のポンペオ国務長官は直ちに英国に飛んだ。ジョンソン首相と会談後記者会見したポンペオ国務長官は、「我々は信頼できないネットワークを通じて情報交換は決して行わない」と強調したものの、「ファイブアイズに関する限り米英同盟は強固であり、協力関係は継続する」と語った。しかし米国は諦めない。トランプ大統領が電話でジョンソン首相を恫喝したほか、ペンス副大統領が「米英の貿易交渉に影響を与えるだろう」と脅しをかけた。

ファーウェイの中枢に侵入した「撃たれた巨人」

では米国はなぜ執拗にファーウェイ排除に走るのか。米国家安全保障局(NSA)は以前ファーウェイの中枢に侵入したことがある。コードネームは「Shot Giant(撃たれた巨人)」。エドワード・スノーデンが2014年に暴露した2枚のスライドを改めて子細に分析すると、NSAの狙いが読み取れる。

一つはファーウェイ製品が世界中で使われていることから、ファーウェイ製品に風穴を開けて、懸念される国や個人の機微な情報を取得する狙いである。ターゲットとされたのはイラン、アフガニスタン、パキスタン、ケニア、キューバだ。

一方ファーウェイと中国人民解放軍の関係解明も関心の的となった。NSAのスライドには「ファーウェイ製品による通信インフラの拡大が、中国人民解放軍のSIGINT(通信傍受を主体とする諜報活動)能力やDoS(Denial of Service)攻撃能力を高めるのではないか」との懸念が示されている。