日本の視聴者向けには、このところ彼がチャンネル内で行っている全6チームの一人リーグ戦に、自身の音声実況もつけ始めた。なにしろ緊急事態宣言で寄席やテレビや営業への出演が軒並みなくなり、自宅で過ごす時間が増えたので、編集に費やせる時間だけはたっぷりある。こちらは土屋の説明によってルールや見どころがよくわかると、好評だとか。
土屋会長を悩ませる“危機的な選手不足”
それもこれも、根底にあるのは競技普及への情熱だ。
「趣味とも違うし、仕事でもないし、むしろお金が出ていくだけなんですが、もうやめられない。僕が勝手に背負い込んでいる使命感なのはわかっているけど、自分が考えたゲームが世界に広まってやがて国際的な大会にまでなったら、マジで夢があるじゃないですか。そんな夢ってなかなか見られませんからね」
と語る本人の表情は本気も本気。大マジメに取り組んでいる、壮大でありながら超個人的なプロジェクトなのである。
ただし消しサカが世界規模のゲームになるには今、深刻な問題が立ちはだかっている。
危機的な選手不足なのだ。
プレーする人間のことではない。そちらもまだ多くはないが、キン肉マンやウルトラ怪獣などのキャラクター消しゴム自体が、街中からほぼ姿を消してしまっているのである。
「今も作られているものはありますけど、ディフェンダーに適した大きめのサイズだけなんです。アタッカー用には、昔よくあった小さいサイズが向いているんですが、そっちはもう製造中止らしくて。だからヤフオクとかで手に入れるしかない。本当はみんながそれぞれ違った選手コレクションを持っていて、この人しか操れないこいつ、みたいな秘密兵器的消しゴムがあったりすると、めちゃくちゃ盛り上がるんですが」
「やっぱりキャラクター消しゴムが最適なんです」
日本で入手困難なのだから、海外の人が仮に消しサカに興味を持ったとしても、試しようがない。芸人仲間で遊ぶ時も、すべて土屋の手持ちの消しゴムを使っていたのだ。
「そんな状態では絶対競技は広まっていかない、選手の規定も変える必要があるんじゃないかという声が、WEFA内でも上がりました(つまり自問自答)。将来を見据え、レゴ人形で試してみたりもしたんですが、どれもだいたい同じ動きになってつまらないし、ピッチ(テーブル)が傷だらけになっちゃうんですよ。やっぱり、キャラクター消しゴムが最適なんです」
競技の存亡にかかわる事態を受け、彼はついに動いた。
「最終的にまとまるかどうかはまだ先が見えませんけど、今、あるところと消しサカ選手を新しく作れないかって話が進みつつあるんです」
WEFA会長の剛腕に期待したい。