考案したのは10歳、キン肉マン消しゴムをアレンジ

現在の消しサカの原型となるゲームが考え出されたのは彼が10歳、つまり小4の時だという。

「頭の中でいろいろ空想を膨らませながら、家にあるものを使って遊ぶのが好きな子供だったんです。クラスにもう一人、そんなことばかりしてる友達がいて、ある日その子の家でもっと何かできないかと研究しているうち、当時流行っていたキン肉マン消しゴムを使ったサッカーゲームができあがりました。友達はすぐ飽きてファミコンに夢中になったんですけど、僕はそのサッカーゲームをすごく気に入っていたので、試合の進め方やルールの改良はもちろん、ボールをサイコロにしたり、ちゃんと立体的なゴールを作ったりと、一人でどんどん突き詰めていったんです」(土屋、以下同)

消しサカをざっくりと説明すれば、昔懐かしいキン肉マンやウルトラ怪獣、ドラゴンボールなどのキャラクター消しゴムを選手に見立ててテーブル上に敵・味方11体ずつ並べ、対戦者が交互にノック式ボールペン(三菱鉛筆の『BOXY』が最適)のスプリングが戻る力で消しゴム選手を弾いてサイコロ、つまりボールを飛ばし、相手ゴールへと迫るというものだ。

プレー中に部屋を出るのは夕飯の時だけ

もっとも、土屋の小学生時代の消しサカは、今と少しルールが違っていた。

「対戦形式ではなく、2チームとも一人で動かしていましたし、ゴール前にびっちり選手を並べてもかまわないルールだったので、2、3時間でやっと1点入る感じでした」

なかなかシュートが決まらないのはともかく、一人で両チームを動かして遊んでも楽しいのだろうか。どちらも自分なのだから、相手の狙いは筒抜けだろうに……。

「だから、いかに公平に精神を切り替えて、両方のチームに入り込めるかがポイントなんです。試合に集中すれば、それができるようになります。大事な場面になるとボールを蹴る選手として緊張するし、その時のチームメイトの気持ちやスタジアムの歓声まで感じ取れますから」

プレー中に部屋を出るのは、夕食のため階下の居間へ降りていく時ぐらいだった。

「気が散るから、部屋ではラジオも音楽もかけません。22人の精神を使い分けながら、頭の中では試合中の実況や解説もやらなきゃいけないので、めちゃくちゃ忙しいし、すごく疲れるんですよ。でも、それが楽しい」

中高生になっても衰えない「消しサカ」への情熱

想像力がたくましい、などという次元を軽く超えた少年時代だったのである。だが自室にばかりいる日々を送っていて、さすがに両親が心配しなかったのか。

「親を安心させるために、中学ではソフトテニス、高校では硬式テニスと、運動系の部活に入っていました。テニスを選んだのは、運動部の中で一番早く帰れるから。家で少しでも長く、消しサカをやりたかったんで。小学生の時は学校から帰ってきて夜中の12時ぐらいまででしたけど、中高生時代は深夜の1時、2時まで毎日やってましたね。消しサカのことは、親にはバレてなかったと思いますよ」