大学4年時、落研の1年先輩で部長をやっていた現在の相方、塙宣之に誘われてナイツを結成し、プロの漫才コンビとして活動を始める。
「ライブとアルバイトで忙しく、消しサカをやる時間そのものがなくなりました。たまに頭をよぎることもなくはなかったんですが、やろうにもやれないんだから、気持ちも全然うずかなかったですね。やがていろいろお仕事もいただけるようになり、結婚して所帯を持つと、本当の中心メンバーと言える消しゴムだけを実家に残して、かなりの数を捨てちゃいました。だから大学で落研に入って以降、消しサカとはずーっと疎遠でしたね」
20年ぶりに封印を解く……目指すは「消しサカ」界の嘉納治五郎
キャラクター消しゴムは何百もの種類があるが、どれもが消しサカで活躍できるわけではない。プレーヤー、つまり土屋がボールペンのばねを使って、消しゴム自体の動きや蹴られたボールの軌道を意のままに操れるか否かが何より大切で、条件を満たす消しゴムは限られてくる。
そんな選ばれし精鋭メンバーも、彼の実家にずっとしまいこまれたまま忘れられていく、はずだった。あの日までは……。
2018年11月22日放送の『アメトーーク!』「一人遊び大好き芸人」回への登場オファーを受けた際、土屋は馬の絵を描く趣味と一緒に消しサカも紹介しようと、約20年ぶりに封印を解いて実家から持ってきた消しゴムを使い、テレビカメラの前で実演した。
「そしたらやっぱり、おもしろいんです。収録を境に、家族が寝静まった深夜のリビングルームでこっそり始めたら、また熱がぶり返しちゃって……」
そこへちょうど、NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の放映が始まる。
「スポーツという概念を日本に普及させようとした嘉納治五郎の精神に、すごく感銘を受けたんです。だったら同じように、消しサカをスポーツとして広めたら面白いんじゃないかと思いついて」
土屋は、消しサカならではのスーパープレーを紹介する自身のYouTubeチャンネルを立ち上げ、芸人仲間にも競技を勧めて、楽屋で一緒に試合をやり始めた。
協会設立、メンバーは土屋“会長”ただ一人
チャンネル立ち上げにあたり、土屋は世界消しゴムサッカー協会『WEFA』(World Eraser Football Association)を設立した。会員は今のところ、会長でもある彼一人。アップされている動画ではスーパープレーの実演のほか、撮影、編集、テロップ入れ、投稿も全て土屋が行っている。
そして芸人仲間ではサンドウィッチマン、中川家、ロッチ、小島よしおらを同志として引き込むことに成功。営業先などで顔を合わせると、対戦するようになった。
「特に地方営業で1日2ステージある時なんか、本当に楽屋でやることがないので、いい退屈しのぎと受け取ってくれたみたいです。芸人の中で一番うまいのはラバーガールの大水(洋介)君で、器用なのは四千頭身の後藤(拓実)君。東京03の飯塚(悟志)さんもいいセンスしてます。横着な人はダメですね。腕だけを伸ばして自分の方へ向けて打ったりせず、ちゃんと打点の後ろまで移動して打たないと、正確なショットはできません。そういうところにけっこう性格が出るんです」
彼らとプレーを重ねていくうち、一人遊び用だったルールは対戦向きのゴールが入りやすい形へとブラッシュアップされ、よりスペクタクルなゲームになっていった。