借金大国に残された2つの最終手段
これでは200年たっても、300年たっても返せっこない。となると残る手段は「借金踏み倒し」しかない。
「国の借金は国民の財産だから問題ない」と主張する人がいるが、鎌倉幕府や江戸幕府のことを考えて欲しい。彼らは、財政が苦しくなると、徳政令を発動して豪商からの借金を踏み倒した。幕府の借金は無くなるが豪商の資産もなくなった。
まさか現在の政府が徳政令など発令するとは思わないが、ハイパーインフレなら大いに可能性がある。ハイパーインフレは債権者から債務者への富の移行という意味で徳政令と同じである。
タクシー初乗りが100万円というハイパーインフレが来ると、10年間で一所懸命1000万円の預金を貯めた人(債権者)は10回タクシーに乗ると預金が無くなる。一方1114兆円の借金をもつ日本一の借金王である国は大いに楽になる。
タクシー初乗り100万円時代の1114兆円はたいした額ではない。なにせタクシーに人が乗るたびに10万円の消費税収があるのだから。
財政楽観論者と大政翼賛会の宣伝読本の共通点
近年にもハイパーインフレで国民が財産を失い、財政再建に貢献した例がある。戦争中の戦時国債がそれだ。以下は、戦時中に大政翼賛会が国債購入促進のために、隣組に150万冊配った宣伝読本『戦費と国債』からの抜粋だ。
(答)国債がたくさん増えても全部国民が消化する限り、少しも心配は無いのです。国債は国家の借金、つまり国民全体の借金ですが、同時に国民がその貸し手でありますから、国が利子を支払ってもその金が国の外に出て行く訳ではなく国内で広く国民の懐に入っていくのです。(中略)従って相当多額の国債を発行しても、経済の基礎がゆらぐような心配は全然無いのであります。
最近よく聞く財政楽観者からの発言と全く同じだが、この戦時国債はハイパーインフレで紙くず同然となった。
ここまでの議論は、こうならざるを得ないという「べき論」に過ぎないのだが、実は政府・日銀は「ハイパーインフレへの道」をすでに歩み始めている。2013年4月に異次元緩和という財政ファイナンスを始めてしまったからだ。
白川日銀から180度の路線転換をした黒田総裁
2013年4月12日、黒田日銀総裁は、就任直後の読売国際経済懇話会で講演し、以下の発言をした。
筆者註:国の借金を中央銀行が紙幣を刷ることによって賄うこと。