短期間の債務超過ならばともかく、当面純資産に戻らないとなると、欧米金融機関の審査部が判断したら、日銀に対する信用枠(=取引枠)は縮小もしくは廃止されるだろう。
債務超過とは民間で言えば倒産状態である。どの銀行も損を被りたくないのだから取引中止は当然のアクションだ。そうなると外資はドルを売ってくれなくなる。為替とは日銀当座預金を通じての取引だからだ。取引枠が無くなり日銀当座預金に円を置けない、すなわち円という対価を受け取れないのだから、外銀がドルを売ってくれるはずがない。
基軸通貨ドルとの関係を遮断された通貨など世界から相手にされない。円をドルに換え原油を買うことも、海外農産物を買うことも出来なくなる。円の暴落、ハイパーインフレ一直線となる。もちろん日本売りの発生だ。このリスクは過小評価しないほうがいい。
債務超過になっても大丈夫な中央銀行の条件、日銀は……
長期金利が0.3%上昇すれば、このような事態は起きる。コロナ禍の最中に起こらなくとも、景気回復時には長期金利は間違いなく0.3%を超えて上昇するだろう。
世界中の金利が上昇を始めた時に、日銀はいつまで長期金利を抑え込めるのか? 黒田総裁は毎日ドキドキだろうと思料する。この厳しい現実は、見たくもない現実かもしれないが、起こりうる現実だ。
それならば、日銀はすべての国債を買ってしまえばいいではないか? という疑問があるかもしれない。しかしそんなことをしたら日銀当座預金残高は1000兆円にも膨れ上がる。未来永劫に政策金利を上げなくて済むのなら話は別だが、政策金利を1%上げるごとに日銀は支払金利を10兆円ずつ払わなければならなくなる。巨大な損のたれ流しだ。
そんなことが予想される中央銀行の通貨を外国人は信用しない。円の暴落、ハイパーインフレへの道筋は変わらない。なお、金融学的に中央銀行が債務超過になっても大丈夫なのは3つの条件が必要とされている。
2.債務超過の原因が金融システムの救済であり、金融政策は厳格に運営されていると信じる
3.財政が緊縮に向かっている
日銀の状態は、残念ながらこの条件をどれも満たしていない。この状態では政府・日銀は全く頼りにならない。だからこそ私は保険として多少なりとも、円をドルに換えておいたほうがいいと皆さんにお勧めしている。
それにしても、世界最悪の財政状態を長年放置し、禁じ手中の禁じ手を行うことで危機を先延ばししてしまった政府・日銀の政策ミスはくれぐれも残念でならない。せめて後世の教訓にしなければならない。