※本稿は、ジム・ロジャーズ『大暴落前夜 狂宴バブル後の生き抜き方、資産の守り方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「今回は違う」と熱狂するときこそ危険な兆候
2025年10月、世界の株式市場は依然として強気相場、いわゆる「ブルマーケット」の状態が続いていた。アメリカ市場を見てみると、2009年3月に始まったブルマーケットが史上最長となり、2020年2月のコロナ・ショックまで続いた。その後もAIやテクノロジー分野の急速な成長が追い風となり、S&P500指数は2022年10月から2025年8月までのわずか3年間で、なんと81%以上も上昇している。驚くべき数字であり、これを見て「まだまだ株価は上がる」と楽観的になる投資家も少なくない。「これで景気は永遠に良くなる」と考えている人もいるが、もちろん現実はそう甘くない。
長期低迷の後の上昇相場では、初期段階において多くの新規投資家が市場に殺到し、熱狂が生まれる。日本市場でも、証券口座の開設数が急増したり、株の話題が日常会話やSNSに溢れるといった現象が現れたりする。こうした心理的熱狂は、株価を実体以上に押し上げ、過熱感を生む。日経平均は10万円まで上がるだろう、という極端な予測が語られ始めるのも、バブル崩壊の兆候の一つである。
私は、このような局面では慎重に行動する。市場の動向を観察し続けるのだ。重要なのは、市場がヒステリックな楽観に陥った際に、冷静でいられるかどうかである。
2025年の世界を振り返ると、特にアメリカは非常に長い間、好調を維持してきた。歴史上でももっとも長い安定期にあり、このまま永遠に続くのではないかと思えるほどである。しかし、過去のアメリカには悪い時代も長くあった。だからこそ、私は人々に「用心深くあれ」と伝えたいのである。
1910年代、1920年代、1970年代、そして2000年代、どのブルマーケットもいつかはピークを過ぎ、必ず調整局面や暴落が訪れてきた。どんなに好調に見えても、永遠に続くブルマーケットなど存在しない。市場には周期があり、人間の心理や経済の構造は常に変化する。だからこそ、楽観だけで突っ走ることは非常に危険なのである。
歴史は繰り返すと言われるが、それを実感するのはいつも「後から」である。ブルマーケットの最中に備えを怠ると、次の「ベアマーケット」(弱気相場)で大きな痛手を負うことになるだろう。
結局、投資というのはタイミングのゲームである。市場は上がり続けるときもあれば、下がるときもある。何が起こるのかを注意深く見守ることが必要だ。歴史が示すように、しばらくは厳しい時期が続くかもしれない。しかし、十分な貯蓄を持ち、自分が理解している分野に投資している人ならば、おそらく大丈夫だろう。問題は、多くの人がそうではないということ。だからこそ、皆さんにはぜひ準備をしていただきたいのだ。



