フランス人カップルによる出生数の減少が響き、2010年頃には2.00を超えていたフランスの合計特殊出生率も、2015年頃から低下が顕著となり、2018年には1.88となった。フランス人カップルの出生数の減少ペースを、外国人による押し上げ効果がカバーしきれなくなった形である。

その結果、2000年には出生数の85%を占めていたフランス人同士のカップルの子どもは、2018年には75%にまで低下している。フランスでは、すでに新生児の4人に1人が、少なくとも片方の親は外国籍ということになる。

再び少子化傾向が顕在化しつつある

近年フランスでも、若年失業率が高く経済的に余裕がない世帯が増えていることや、男女ともキャリア形成を重視することなどにより、出産を先延ばしするケースがあるなど、わが国でもみられる課題が浮き彫りとなり、再び少子化傾向が顕在化しつつあると考えられる。結果的に、近年のフランスにおける出生数の動向は、国境を越えたヒトの移動の増大に伴い流入した外国人により、下支えされている面が否定できないのである。

フランスのように若い世代を支える政策を充実させてもなお、自国民の少子化を劇的に改善するには至っていない。しかし、フランスの手厚い家族給付は、永住資格あるいは正規の滞在資格を有する外国人も対象としている。フランスの社会政策は、子どもを産み育てる若い世代の暮らしを下支えするのみならず、外国人をも包摂し、結果的に子どもの権利を保障するものとなっているといえる。

近年、世界各地で移民排斥を訴える政党や団体の活動が活発化しており、フランスでも極右とされる政党が国政の重要な位置を占めるまでに勢力を拡大している。しかし、フランスでは、実態としてフランス人カップルによる出生数が急速に減少するなか、外国にルーツを持つ子どもの数は着実に増え、彼らも手厚い社会福祉政策を受けることができているのである。

なお、わが国においては、外国人の出生数は年々増えてはいるものの、2018年の段階では1万人台に過ぎず、全出生数に占める割合では2%に達していない。外国人労働者に対するわが国の門戸は確実に広がっているものの、フランスの水準にまで届くには、相当の時間を要することになる。