日本の出生数が減りつづけている。どうすればいいのか。日本総研の藤波匠・上席主任研究員は「子育て支援といった社会福祉政策だけで、出生率を向上させるのは難しい。出生率の回復に成功したと評価されるフランスでも、出生数が増えているのは外国人カップルで、フランス人カップルの出生数は一貫して減り続けている」と指摘する——。

※本稿は、藤波匠『子供が消えゆく国』(日経プレミアシリーズ)の一部を加筆・再編集したものです。

パリのサクレクール寺院の近くで、美術館に入るのを待っている子供たち
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ついに出生数は90万人を割り込んだ

2019年、わが国における日本人の出生数が前年比で▲5.9%減少し、86万4000人となった。2016年に100万人を割り込んだことが話題となったばかりであったが、早くも2019年に90万人を大きく下回ることになった。

▲5.9%減の衝撃は伝わりにくいかもしれないが、これと同等の減少がみられたのは、戦後2度訪れたベビーブームが終焉した時期のみである。過去2度のベビーブームは、他の時期よりも出生数が急増した分、その終焉時には崖のような急減がみられた。今回は、すでに長期にわたり出生数は減少傾向にあったにもかかわらず、まさに崖のようにドスンとした落ち込みを見せたのである。

出生数から見ると、これまでの予測以上の速さで人口減少が進むだろう。そこで本稿では人口減少を契機として日本社会が進むべき道程について考える。その際、経済成長は不要との立場は取らない。「経済成長は必要で、次世代が、先を生きる世代よりも、少しでもいいから豊かになる」というまっとうな国のあり方を提示したい。

わが国出生数、合計特殊出生率の推移