新型コロナによる感染者数や死者数が、欧米に比べ格段に少ないわが国において、経済の落ち込みからの回復に欧米よりも時間を要すると予測されている。日本総研の藤波匠上席主任研究員は「背景には、労働集約的で成長力に乏しいわが国の産業構造の影響がある」と指摘する——。

※本稿は、藤波匠『子供が消えゆく国』(日経プレミアシリーズ)の一部を加筆・再編集したものです。

誰もいない春の公園
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出生数の減少は構造問題、V字回復は困難

2019年に起きた前年比▲5.9%という出生数の急減は、これまで終戦直後と1970年代前半におとずれた2度のベビーブームの終焉時にしか見られていない。

わが国出生数は、団塊ジュニア(1970年代前半生まれ)の出生がピークだった1973年に209万人を記録した。それ以降、前年比▲3.0%程度の比較的早いペースで減少してきたが、一転1990年代に入ると減少のペースは緩やかとなり、2015年ごろまで微減傾向で推移した。

それが、2016年に100万人を割り込んだことが驚きをもって報じられて以降、一気に下げ足を速め、そのわずか3年後の2019年には90万人を割り込んだのである。

今後も▲5.9%の減少が続くとは考えにくいものの、もし続くとすれば、わずか12年で出生数は半減することになる。1973年の出生数のピークから半減するまでおよそ40年かかったことを考えると、▲5.9%の減少ペースの衝撃の大きさがわかるというものだ。

では、長らく少子化が指摘されてきたわが国の出生数が、ここへきて急減と呼べる状況に至ったのには、どのような理由があるのであろうか。

その理由を明らかにするため、出生数の変化を、「出生率」要因、出産期の女性の「年齢構成」要因、同じく「人口(女性数)」要因の3つに分解する。出生率の低下や出産期にある女性の減少は、出生数の減少に直結することは自明である。同時に、高齢の女性ほど出生率が低下することから、年齢の高い女性の割合が高まることも出生数を下押しする。例えば、人口ボリュームの大きな団塊ジュニアが、2010年には出生率が低下する35歳を超えたため、年齢構成要因は出生数の下押し要因となった。

出生数の変化の要因分解