フランスは「子を産み育てやすい社会」といわれるが…

出生数の急減を受け、これまで以上に手厚い少子化対策の必要性を指摘する声が上がることになるだろう。わが国では、少子化が加速傾向にあるものの、先進国の中でもフランスのように、少子化対策に一定の成果が得られたと評される国もある。そこで、まずは子育て世代に手厚い社会政策によって出生数が回復したとされるフランスの状況についてみてみたい。

合計特殊出生率で比較すると、わが国の1.42に対してフランス1.88と、その差は歴然である(出生率データは2018年)。フランスの出生率は、近年わずかに低下傾向にあるものの、最低であった1993年の1.73よりも高い水準を維持している。また実数でみても、フランスの出生数は、近年でこそ減少傾向にあるものの、2010年頃までは増加傾向にあった。

フランスの少子化対策が称賛されるのは、子育て世代を中心とする家族向け社会支出が手厚く、たとえ非婚女性が出産しても、サポートする社会制度などが充実しているためである。OECD(経済協力開発機構)の基準に則り、先進各国のGDP対比の社会支出をみると、フランスはわが国よりも、「家族」「労働」の分野での給付が手厚いことがわかる(図表2)。

「家族」は、児童手当や育児・介護休業給付などであり、「労働」は教育訓練給付、雇用調整助成金、失業関係給付などを指す。「家族」「労働」の社会給付が手厚いフランスは、若い現役世代が、安心して働き、子を育て、必要に応じて休むことを保障する社会システムを構築していると言えよう。

潤沢な資金をもとに、フランスでは保育園などが充実し、子育てしやすい環境が整えられているとされる。すなわち、働き、子育てをする若い世代に対する手厚い社会保障が、子を産み育てやすい社会のバックボーンとなっているのである。

フランス人カップルの出生数は一貫して減少

しかし筆者は、フランスにおけるこうした社会政策の導入と出生数の回復には、必ずしも明確な因果関係があるとは言い切れないと考えている。実は、フランスの出生数や出生率の回復には、外国人が大きく貢献しているのである。フランスの出生数が回復期にあったとされる2000年以降に注目しても、フランス人カップルから生まれた子は一貫して減少している。

フランスの出生数の推移を、親の国籍別に詳しくみてみよう。フランスの出生数が増加した2000年からの10年間の変化を見ると、年間の出生数は2万5000人増加したが、実はこの間、フランス人カップルから生まれた子は1万7000人減少している(図3)。一方、同時期にフランス人と外国人のカップルから生まれた子は、4万人も増えている。

2010年以降は、外国人の存在感が一層顕著となる。フランスの年間出生数は、2010年をピークに再び減少に転じ、2018年までの8年間で7万4000人減少したが、その内訳をみると、フランス人同士のカップルの子は、全体を上回るスピードで減少し、9万8000人減であった。この間、フランス人と外国人のカップルはおおむね横ばい、一方で外国人同士のカップルの子は、2万4000人増えている。