保健所に罪をなすりつける加藤厚労相の、救いようのなさ
加藤勝信厚労相は記者会見で「(当初の目安が基準のようになったのは)我々から見れば誤解」と釈明したが、国民民主党の小沢一郎衆院議員は5月9日のツイッターで「『誤解があった』と厚労大臣。あれだけ病院に行くなと言っておいて、誤解の訳がない。非は絶対に認めない。この基準でどれだけの方が犠牲になったことか。しれっと変えて、誰も責任はとらない。政権の手口に国民が慣れてしまったとしたら、また同じことが繰り返されるだろう」と批判。落語家の立川志らく氏も11日のTBS系「グッとラック!」で、「謝りもせず、この方が大臣というのが日本の悲劇のような気すらしてくる」と怒りをぶつけた。
加藤氏は、当初の目安は「検査機関に対するものではない」とも説明したが、国による「目安」設定は、感染の有無を調べるPCR検査や診断の「障壁」になっていたと指摘されている。元大阪府知事の橋下徹氏は「保健所が誤解していたなんてことを大臣が言ったら、保健所も怒り狂う」(10日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」)と指摘している。
安倍政権による方針転換で自治体、保健所、医療現場が大混乱
安倍政権による方針転換で自治体や医療現場、保健所などの混乱を招いたのは、これだけではない。象徴的なのは感染者の「自宅療養」についてだ。
国は3月1日付で都道府県や保健所を設置する市、東京23区に対して「感染が拡大した状況では、無症状者及び軽症者については、自宅での安静・療養を原則とする」ことを通知した。厚労省が5月6日に発表した感染者の療養先に関する全国調査の結果によれば、4月28日時点で8711人のうち「自宅療養」は1984人に上っている。だが、4月2日付では「宿泊療養中または自宅療養中の軽症者等にPCR検査を実施する体制をとることにより、重症者に対する医療提供に支障が生じるおそれがある場合には、宿泊療養又は自宅療養を開始した日から14日間経過したときに、解除することができることとする」と通知。4月23日には、加藤厚労相が軽症者はホテルなど宿泊施設での療養を基本とする方針に転換し、施設療養を優先する通知を出した。