女性ばかりではない。劇作家の三谷幸喜や俳優の西田敏行らが駆け出しのころ、彼らと新宿で出会ったことも原田さんの自慢である。
最近会った女優の長澤まさみのファンとなり、自らを「長澤まさみ党」と今は名乗っている。「シネマと美女と夢とロマン」が口癖だけのことはある。
「足腰が動かなくなるまで働く」
ずっと独身で今も販売店の4階の部屋に一人で住む。販売店の定年は65歳だったが、定年を延長してもらい、72歳まで社員として働いた。
この3月からは嘱託社員となった。それを機に新聞配達は卒業し、集金業務だけを続けることになった。
給料はどれぐらいだったのかと尋ねたが、「お金よりも夢」と笑うのみ。業界の平均的な年収は正社員ならば300万~400万円の水準だというから、ぜいたくはできないが夢は追いかけられたわけだ。
「僕には引退という言葉はないよ。足腰が動かなくなるまで働くよ」と原田さん。
若いころの夢をあきらめ会社勤めをする人がいる。会社に入って、少しでも出世したいという儚い夢を抱く人もいる。多くの勤め人はそのいずれかか、せいぜい夢を趣味にして楽しむぐらいが関の山である。それに比べて原田さんの人生は、夢のために仕事をし、仕事をしながら夢にまで見た人たちと出会う人生である。これもまた一つの理想の生き方かもしれない。