ただ、「必要不可欠な仕事での外出がない国民の大多数」は政府が訴える「家にとどまれ!(Stay Home)」の掛け声を守っている。
なぜなら、このコロナ対策は政府から「数十万人の死者に自分が含まれるかもしれない」「あなたの大切な誰かが死ぬかもしれない」と刷り込まれたところからスタートしているからだ。家にとどまることで、「ウイルスをもらってきて重症化するリスク」が避けられるのであれば、わざわざ外に出歩くことなど考えもしないのは当然だろう。
休業中の人がスーパーや物流のアルバイトを始めている
世界各国で「行動制限に伴う経済への悪影響とのバランス」は大きな問題として捉えられている。個人の貯蓄がギリギリの人は、今月払う家賃に事欠くどころか、食費にも困るという状況が生まれることは容易に考えられる。
そんな中、イギリスではどんなことが起きたか。
最も厳しいあおりを受けたのは、サービス業の従事者だ。首相演説を通じ、レストランやカフェは休業を命じられた格好になっているが、それ以前に従業員給与の80%まで政府補助を出すと決めたことで、躊躇なく閉店判断ができた。さらに厳しいのは航空業界や旅行業界だが、同様の補助スキームにより救われた従業員は多かっただろう。ただ、経営に当てる資金は別の補助申請が必要で、経営者は対応に難航している。
そんな中、人材の確保に大きく動いたのは小売、物流業界だった。パニック買いが起きて以来、スーパー各店舗は普段より手厚い品出しを行っており、人手の増員に迫られている。また、外へ出ない、出たくない市民が激増する中、通販の配達に当たるドライバーが全く足りていない。しかも、こうした従業員の中からも感染者が出て、「戦線離脱」を余儀なくされた店員やドライバーたちがいる。
極端な例では、運休著しい航空会社のパイロットがスーパーの配達人としてアルバイトに行っているケースもある。また、コロナ対策の「野戦病院」が全国で建てられており、そこへのスタッフ確保のために航空会社の客室乗務員が駆り出されたりもしている。つまり、総動員態勢でこの急場をしのごうとしており、「ただ失業して膝を抱えている場合ではない」というのが本音とも言える。