ただ、3月中旬になっても、新型コロナウイルスは収束どころか状況は悪化するばかり。広告宣伝の自粛をせず、通常営業をしているホールも一部あって、全日遊連は3月10日、13日、19日と再三にわたって広告宣伝のさらなる配慮、徹底の要請を出してきた。そして3月25日に外出自粛要請が出されると、大手法人をメインに土日の二日間の休業に踏み切った。ホールにとっては、一番集客できる週末に営業しないのは断腸の思いだっただろう。週末休業は翌週も続き、多くのホールがコロナウイルス感染防止の要請に協力する姿勢をみせた。
3月のパチンコホールは、営業日の減少、さらに自粛ムードが相まって、全国的に集客は落ち込んでいた。パチンコ店はお客さんが来てくれなければ還元もできない、つまりは勝ちづらくなってしまうため、さらなる客離れを招いてしまう。そんな悪循環によって、皮肉なことに「3密」にはほど遠い状態に陥っていたホールも見受けられた。
そして、4月4日、5日と2日連続で東京都内での感染者が100人を超すなど、状況はさらに悪化した。
4月8日には緊急事態宣言が東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県に、さらに16日には全国に発令された。多くの都道府県がパチンコ店を休業要請対象としたこともあって、それに応じるように多くのホールが長期休業に踏み切ったのだ。自粛ムードが漂う昭和天皇崩御や東日本大震災の時でも休業することはなかっただけに、日中から軒並みホールがシャッターを降ろしているのは過去にも前例が無い。
現状では多くのパチンコ店が休業要請に応じているが、店を閉じるのは簡単な話ではない。飲食店などと同じで、営業しなければ収入は無い。
緊急事態でも営業を続けるホールの実態
また、パチンコ店に吹き付ける逆風はコロナによる来客減少だけではない。
まず、「ギャンブル等依存症対策基本法」の一環としてパチンコ機の規則改正が行われたことだ。21年1月末日までには、すべての台をこの新規則に沿ったものに入れ替える必要がある。遊技機は一台約50万円するため、当然ながら入れ替えには大量の資金が必要になる。
さらには4月からの禁煙化によって、多くのホールが喫煙ルームを設置した。そういった設備設置費を賄わなければいけないホールも多くあっただろう。それに、従業員の給料や家賃・テナント費用なども当然、待ってはくれない。資金繰りがギリギリの自転車操業の零細パチンコ店は、「休業した方がいいのはわかっているけど、閉められない」という事情もあるのだろう。
そんな理由で、緊急事態宣言の中でも営業を続けているホールがあるのも事実だ。そんな強行営業を続けるホールでは、出入口を1個に絞り、入店者全員をアルコール消毒と非接触体温計で検温、そして遊技台は1台おきに電源を切りお客さん同士が隣り合うこと防止。さらに空き台を頻繁に消毒して「消毒済み」と書かれた札を立てかけるなど、できうる限りの感染予防対策を講じていた。
もちろん、こういった対策を講じるにはマンパワーが必要になる。入店者全員のアルコール消毒や検温には、それを行うスタッフも必要になる。また、遊技台を1台おきに稼働させる対策についても、ただ機械的に1台おきに電源を落としてしまっては、人気のあるパチンコ台で営業ができなくなるため、不人気の台と人気の台を交互に設置し、不人気の台の電源を落とす措置をしていたパチンコ店が多かった。これも、営業終了後にスタッフが1台40キロ以上あるパチンコ台を移動させたのだろう。
現場で働く人たちも、働かなければその日の糧を得ることができない。そのため、急に追加された検温や台移動のように、慣れない業務や肉体的にきつい仕事であっても、目の前の仕事をこなしていくしかない。働く人たちも生き残りをかけていることが現場からは伝わってきた。